第223期全作品一覧

# 題名 作者 文字数
1 あの時何と言えば良かったのか? 小説作家になろう 272
2 序章趣味 テックスロー 992
3 春秋 shichuan 999
4 たなかなつみ 1000
5 ツリオジ 志菩龍彦 1000
6 新月 kyoko 999
7 Brand new _ 霧野楢人 1000
8 小学生はつらいよ euReka 1000

#1

あの時何と言えば良かったのか?

 あのときなんといえばよかったのか? 思い出している。 何でこんなことをいまさら。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、五つ。  幸せの階段の一段めであり、 追い込まれた状況で、、、
其れが今わかっても。 どうということもない。 ああ、幸せな人生だったと感じている。(そうだ、感じ、気持ちは書かない)
 気持ちは伝わらない。

 ああ、今から行動しなければ、、、 おもしろい。楽しい。
+++
 ひとつ、ふたつ、、、書くのは。かなり坂道を登るような。 急な坂道だ。 昔の行商人は荷物を担いで坂道をあがった、、、
のだろう。 オレは怠け者だ。。。 (w笑 ガハッハ


#2

序章趣味

 日が昇ればその日はそれで満足で、あとは一日何も考えずに過ごせるし、物事の始まりと終わりがあるならば、いつも始まりの部分だけすすって生きてきた。結論なんて出したことはないし、それで困ったことはない。自分がやろうとしていることをほかの人がやったら、悔しがるどころか、大いに喜び、序章から第一章に飛び立つ後ろ姿を見て、ほっと胸をなでおろす。かといって何もしないわけでもなく、無職や引きこもりのような人種に対しては大きな羨望と軽い侮蔑とを投げる。達観などからは最も遠く、僧侶のように自分の屁理屈に過去の教義を塗り付けて屹立させて悦に入るような無粋な真似もしない。
 そんな序章趣味の人間たちは、数としては決して少なくはないが、その実数は知れないし、実のところお互いが序章趣味なのかどうかは、わからない場合も多い。永遠の物語の読者かつ、主人公でいたいという序章趣味を持つ人間たちの中で、最高齢の男性が亡くなった。八十六歳で、死因は肺炎だった。親族も多く、小学校の校長をしていたため、葬儀の参列者は多く、その中には序章趣味の者もいた。死んだ老人の孫がまさにそうだった。
 孫は老人の生前、よくその話し相手になった。老人の話はいつも、その丁寧な視点を用いて、日常という川からすくった水に映る景色に名前をつけるような、そんな美しいものだったが、孫はその背後にある序章趣味を敏感に嗅ぎ取った。老人の切り出す日常の話は、一つとして同じ色のものはなく、本が開きっぱなしで散らかされているようでもあった。まだ孫が小さい頃、老人が一緒に公園で遊ぶ喜びの背後には、孫の生命力をたたえる中で、自身もまだ序章であるというエネルギーがあり、年を取り流行病に冒され、その生命の可能性が狭まり、想像力までむしばもうとしているときにも、老人はまだ序章にいた。この物語が喜劇なのか、悲劇なのか、まったく明かされないまま、老人は序章を引き延ばしていた。始まりを楽しんでいた。
 通夜の晩、皆が寝静まった時間、孫は老人の棺ののぞき窓を開け、老人の顔を見た。周りを確認し、老人のまぶたを押し上げると、ただそこには白目があった。じっと見ていると今にも黒目がまぶたの地平線から昇ってきそうだった。
 日が昇ればその日はそれで満足で、あとは一日何も考えずに過ごせるし、物事の始まりと終わりがあるならば、いつも始まりの部分だけすすって生きてきた。


#3

春秋

――遠くで蟄虫の戸を啓く春雷が轟いた

 親に死んでほしいと願うことは、罪ではないだろう。自らが手を下すわけでなく、下すこともできない。願い、祈り、待つ。偉大な親を持つと苦労する。なぜ自分が生まれたのかを問いたくなるほど、多くの種子がまかれ、育つことなく死んでいった。風に吹かれて南側に寄って転がったことが、今自分が芽吹いている理由だ。ほとんどの兄弟は親の枝葉に陽を遮られ、無念のうちに、怨嗟もなく、枯れた。しかし、自分ももう危うい。偉大な親は貪欲に枝を伸ばす。もうすぐ自分の上空が覆われ、陰となる。南へ陽光へ伸びる以外、抗う術もない。親の周囲の地面は、陰でも育つ低草のみで樹木はない。春には光を透かす新緑の葉が、濃緑に変わる。影の密度が濃くなるにつれ、絶望が深くなる。巨樹の暴力に覆われようとしたとき、祈りが通じた。夏の終わり、前触れもなく、暴風雨が吹き荒れた。台風だ。支配者への裁きは苛烈だった。その巨木ゆえに暴風を受け流すことができず、枝葉を振り乱し、そして咆哮とともに倒れた。
 その後にあるものは、平和ではない。さらに熾烈な生存競争。淘汰を重ねる、次の太陽の光をかけた支配者への道。光へ光へ。背丈が伸び、順調に勝ち上がっていたとき、そいつは静かに足元から忍び寄ってきていた。蛇のように狡猾に胴に巻き付き這い上がってくる。逃げられない故に、じわりと恐怖が広がる。締めつけにより死ぬことはないのだが、成長が遅れれば、他の兄弟に制空権を与えることになる。負ければ死。術はある。根から養分を懸命に吸い上げ、枝先に送る。芳醇の実。息を潜めて待つ。待つ。待つ。待つ。来た。雄のツキノワグマだ。冬ごもりも近い。匂いにつられ、栄養価の高い実を求めてやってきた。見上げる。そうだ、若い錐状の実だ。美味いにきまっている。爪をかける。登ってくる。実は食われても、また付ければいい。乱暴に折られる枝は必要経費だ。さあ問題は、爪をどこにかけるかだ。100kgを超える巨体をどこにのせる?自分はまだ耐えられる。耐えられるほどに太く成長した。だが、蔓はどうだ?爪をかけるにちょうどいい蔓は?
 危機を脱した自分は、ついに上空を制する。360度覆うものはない。今年は安心して、陽に映えて黄金に燃える葉をハラハラと落とし、実を撒く。ああ、自分を脅かすものもない。雪が舞いはじめ、休息の訪れを知る。

白く静謐な冬は、雪を纏って眠る――


#4

 遠目には、小高い丘の上で眼下に広がる海の景色を眺めて佇んでいる、物静かなヒトがひとり立っているように見える。実際、かれはこの丘の上に佇み、深い樹々の香りのなか、近寄ってくる鳥や虫たちと戯れ、長い時間を過ごしていたことがある。気が遠くなるぐらいの、長い、長い、時間を。
 ヒトの立ち姿にしか見えないそれに近づくのは、そう難しくはない。丘の上に通じる道は整備されており、途中の駐車場からそこまでは歩いて数分だ。小道は地域の人たちの清掃の手が丁寧に入っており、歩くのに困難はない。傾斜が急な箇所は手すり付きの低い階段が設えられ、息の弾む間もなく頂上に到着する。実際に登ってみると驚くほどその道行きは容易だ。
 けれども、実際に丘まで登る人は少ない。それがこの町の住人であれば、ほぼない。私たちが丘への道を尋ねると、町の人たちは怪訝な表情で案内してくれた。
 頂上から少し海のほうへ下った開けた場所に、かれは立っている。あるいは、立っていた。遠目には微動だにせず見えていたその姿が、近づくにつれ、微妙に揺らいでいることに気づく。ヒトが震える動きではない。ヒトの動きで可能な揺らぎではない。その動きは、ありえないほど細かく、ありえないほど小さい。
 やがて、見えてくる。それが小さく小さく動く無数の部分の塊であることが。
 それは、ヒトの姿をしている無数の虫の塊である。羽のあるものは小さくそれを震わせ、蠕動運動する虫たちがその合間を蠢いている。虫たちは小さくそこから飛び立ったり、そこから落ちたりしているが、すぐにその群集へと戻り、塊の一部となる。
 その中央には、存命中はヒトだったかれがいる。いるはずだ。いつ息をひきとったのか、いつまでヒトの姿を維持していたのかはわからない。丘に佇むかれの姿がありえないほど長いあいだ動かないのに気づいたのは、地域の清掃担当者だった。そして、すでにその姿が虫たちの集いでしかないことが目視され、報告された。
 今ではその姿はこの町のシンボルである。町の人たちは丁寧に丘を守り、観光客を迎え入れる。
 私たちの目の前に在るその塊の周辺には、虫の屍が積み上がっている。おそらくその内部も虫たちの墓場となっているだろう。
 私たちはその姿を拝み、撮影した。どぎついコピーをつけてセンセーショナルに扱う予定だった。
 けれども、その場はおそろしく穏やかだった。優しく私たちを迎え入れ、静かだった。


#5

ツリオジ

 私の実家の近くに大きな池があった。
 弘法大師が作ったという伝説のあるその池の畔で、いつも釣りをしている痩せたオジサンがいた。
 近所に住んでいるその中年のオジサンは、毎日毎日、同じ場所で釣りをしており、当時子供だった私達は「ツリオジ」と呼んでからかっていた。
 仕事をせずに釣りばかり出来るのが不思議だったので親に尋ねたことがあった。親曰く、ツリオジは画家か何からしく、そのお陰で時間に縛られないのだということだった。
 ただ、彼の絵はあまり評価されておらず、貧乏暮らしを余儀なくされており、そのせいで奥さんは逃げてしまったのだという。
 ツリオジはいつもボーっとした様子で釣りをしていた。学校の帰りに私達が声をかけても大抵無視された。ある友人が空き缶を投げつけたことがあったが、それでも彼は無反応を貫いた。
 ただし、子供が池に入ろうとすると物凄い勢いで怒り出した。
 ある時、勝手に池で泳ごうとした子供が溺れかけたが、彼がすぐに飛び込みその子供を助けた、ということがあった。
 以来、彼のイメージは、「釣りばかりしている暇人のオジサン」から、「子供が溺れないか見張ってくれているオジサン」というものに変わった。
 そのお陰もあってか、それなりに慕われてもいたのだが、ツリオジにとってはどうでもいいことらしく、相変わらず挨拶をしても無視をするのが常だった。
 その内、ツリオジはぷっつりと姿を見せなくなった。
 彼は自宅で死んでいた。死因は栄養失調だったらしい。
 何故、私が急にそのツリオジのことを思い出したかというと、とあるテレビ番組で、その池の水を全部抜くという企画が行われたからである。
 だが、結局その企画が放送されることはなかった。俗に言うお蔵入りという奴だ。
 何故そうなったかと言えば、番組収録中に池の底から死体が発見されたからだ。
 水の抜かれた池の底に、ゴミと一緒にその死体は横たわっていたらしい。屍蝋化により死体は原型を止めていたので、死因が絞殺であることも解った。
 重しのつけられたその死体は、ツリオジの奥さんだった。
 ツリオジは釣りをしていたのではなかったのである。
 彼は監視をしていたのだ。奥さんの死体が誰にも見つからないように。
 でも、私はその真実を知っても然程驚きはしなかったし、恐怖もしなかった。
 ただ、ツリオジのあの虚無的な横顔を思い出し、少しだけ寂しい気持ちになった。
 それだけである。


#6

新月

お前に、俺の気持ちがわかるか。
ようやく見つけた理想の子だった。
黒髪、笑顔、白い肌。しかも茶道部。
大和撫子じゃん。
間違いないと思った。
一世一代の告白をして、その最初のデートでまさかの彼女の秘密を知った。
舌に光るピアス。嘘だろ。



「俺は、騙されたんだ」
机にぷっつぷして嘆いていると、悪友の苦笑が降ってきた。
「まあでもそれは、しょうがないんじゃね?」
なんでだよ。しょうがなくないだろ。絶対おかしい。
あんなに清楚で従順そうなのに。
「こんな派手なクラスであのスタイル貫ける女が清楚で従順なわけないと思うけど」
悪友の言葉に思わず顔をあげると、視界の隅に彼女がいた。
やっぱり見とれる。
「お前はあれだ、あの隣の子。あの子とかどうよ」
最近つるんでるらしい子は、突然髪を黒くしだした。が、傷んだ髪はすでに色が抜けかけていてパサパサだ。
「ない。それにあの子、昇降口で俺睨まれた」
挨拶してやったのに。
「お前だって黒髪ちゃんのこと睨んでたじゃん。好きだからちゃんと返せないんだろ」
え?と俺はドキッとした。




数日後、髪パサと廊下で会った。
ぶつかりかけた俺をやっぱり睨んでくる。
一瞬考えて、俺は口を開いた。
「あのさ・・・あの子、舌ピしてるよ」
は?とその眉間にしわが寄る。
「見たんだよ、俺。あんなのして平気なヤツと一緒にいない方が・・・」
「平気・・・?」
呆然とつぶやいた後、ぎっとその目がつり上がった。
「んなわけないでしょ!」
えっ、と声を上げて俺はたじろいだ。なんだなんだと人が立ち止まる。
「つーかどっから目線なわけ?! あんた何様!?」
集まる人の中に、目をぱちくりさせた黒髪の彼女を見つけて俺はぎょっとする。
その時ぽんと、肩に手が乗った。振り返ると悪友がいた。
「ごめんね、こいつホント馬鹿で」
いい笑顔で俺を見る。
「いい加減にしろよ、このハゲ」
「誰がハゲだ」
まだ高校生だぞ。
「それに出っ歯だし」
「歯も出てねーから!」
「しかもチョビヒゲだし」
「どこにヒゲあんだよ!!」
無意味に言い合う俺たちに、ぷっと彼女が吹き出した。ひとしきり笑うと、あっけにとられていた髪パサの腕を引っ張って行ってしまった。







「お、はよう」
翌朝、昇降口で俺から初めて挨拶をした。
彼女は少し驚いた顔をしたが、いつものように笑ってくれた。
舌ピってマ?と話しかけてる悪友を横目に見ながら生まれ変わったような気持ちで教室に入った俺に、隠れチョビヒゲというあだ名が爆誕していた。


#7

Brand new _

 会社と家が近いから昼休みには一度帰宅するが疲れはとれない。息子よ、帰った私を見るなり足にまとわりつくのは良い。散歩に行きたいのだな、連れ出すのも構わない。ただ腹に巻いたヒップシートの上に立つのはやめてくれ。
「はーいおちたらイタイイタイだから、おすわりよー」
 まだ言葉を持たない息子に語りかけながら前向きに座らせる。大人しく従ったと見せかけ、息子は大袈裟に振り向くと生えかけの歯を露わに「へへぇ」と笑った。
 この笑顔と妻の休息のため、というのは建前かもしれない。私自身、息子の相手をしていれば疲れるのに元気が出るのだ。今日こそは昼寝を!と思ったところでこの引力には勝てない。麻薬的だ。
 近くの川沿いに出た。小さな堤防から見下ろした川面は春の光で煌めいている。何度も来ているのに、息子は好奇心を剥き出して四方八方に身を乗り出す。脳の急速な発達によって何度でも新しい刺激を得るのだろう。それを繰り返して大人になったのだ、たぶん私も。
 何が見えるんだい。お父さんにとっては手垢のついた景色だけれど、君にはどんな世界に映るんだい。
 息子は胴を押さえる私の左腕を掴みながら物言いたげに首を振った。上着の袖が引っ張られて安物の腕時計が見えた。
 もう戻らなければ、と思った時、「あっ」と声をあげ息子が川の方に手を伸ばした。指差しの形をとれない指の向こうに小鳥がいた。川面へ張り出した灌木の枝にとまるカワセミだった。
 流線型の青い背中に尖った嘴。遠目でもその姿がカワセミだと分かったのは、テレビでよく見るからだった。正確には青よりもっと鮮やかだ。せせらぎが凝集して生まれた命であるかのように、陽光を浴びて体は宝石に似た色彩を放っている。
 佇んでいたのはほんの束の間で、私たちの方を一瞥するとカワセミは枝を飛び出した。青めく光の塊が川面を矢のように横切り、まっすぐそのままどこかへ消えていった。
 私は呼吸を忘れていた。息子にあれはカワセミだと教えなければ、と思う一方で、残像を前にすぐには体が動かなかった。重心が前に傾くのを感じて我に返り、息子を抱く腕を引きながらしゃがむ。急接近した地面に手を伸ばして小さき者は草花をサラサラと撫でた。
 少し視線を上げた視界いっぱいに色とりどりの花たちが溢れてきた。新しい春だ。私は腕時計を右手で隠し、もう一度腕に力を込めた。その中で、もうすぐ一歳になる息子はまた「へへぇ」と笑った。


#8

小学生はつらいよ

 大人なのに、小学校へ入学することになった。
 ランドセルについては、私の場合はリュックサックでも構わないということになった。
 しかしこの学校には制服が無いため、私の姿はどう見ても学校の職員か保護者にしか見えない。
「ねえ先生、あの子おしっこもらしちゃったよ」
 登校初日に、クラスの子がそう話かけてきた。
「私は、先生じゃないけど」
「でも、大人なんだから何とかしてよ」
 私は仕方なく、おしっこをもらした子を保健室へ連れて行って事情を説明した。
 そして雑巾とバケツをもらって教室に戻ると、濡れた床の後片付けをした。

 その後、学校生活は何とか順調に進んだが、給食の時間になると、嫌いな食べ物を私に持ってくる子が続出した。
「あたしは子どもだからピーマンが食べられないけど、あんたは大人なんだから大丈夫でしょ?」
「私はピーマンを食べられるけど、君のピーマンを食べたいとは思わない」
「でも、困っている人を助けるのが大人じゃないの? 知らんぷりするなんて、本当の大人じゃないわ」
 彼らは、大人なら何でもできて、正しいことをやるのが当たり前だと思っている。
「あんたはマトモな大人みたいだから、こうやって頼んでるのよ」
 いやいや、私はマトモな大人じゃないから、こうやって小学校なんかに入学させられる羽目になったわけなのだが……。

 あるとき、教室に一人残って日直の仕事をしていると、担任の教師に飲みに行かないかと誘われた。
 児童を酒に誘っても大丈夫なんですかと聞くと、担任は、大人だから大丈夫でしょと笑顔で答えた。
「あなたみたいな変な存在がクラスにいることは正直不安だったけど、いじめも起きていないみたいだし、案外上手くいってるのよね」
 居酒屋のカウンター席で、酎ハイを揺らしながら担任は言った。
「子どもたちの面倒も見てくれてるみたいだから、あなたには感謝してるのよ」
 担任はしばらくすると酔いつぶれてしまったので、結局、私が自宅まで送り届けることになった。
「ねえ、ちょっとだけ部屋に寄ってく?」
 アパートのドアの前で、担任は私に体を支えられながらそう呟いた。
「なんだか面倒なことになりそうなので、やめておきます」
 私はそう言って、自分の家に一人で帰った。

 次の日の朝、教室に入るとクラスの子がいきなり話しかけてきた。
「昨日の夜、あんたが先生のアパートに入ってくのを見たっていう人がいるんだけど、いったいどういうことなの?」


編集: 短編