第22期 #12
あー、どうしようどうしよう。どうしようもない。どうみたってコレ、ガンだよな? 逆さにしても裏から見ても、太陽に透かしてみても。だよねぇ、そうだよねぇ。転移しまくって末期も末期、まっきっきだよ〜。もーーーっ、絶対無理。治すのなんて不可能だよ〜〜。るーがるー……。いったい、俺にどうしろって? まぁ、とりあえず告知ぐらいはしよう。するっきゃない☆ いんふぉー、むと、こんすたんと……だったっけ? とにかくそんな感じのやつで、教えとく必要があんだよな。正直めんどい。でもねぇ、ぱっと呼んでぱっと言うっつーのも大変気まずかろう。やっぱ、オブラート――いや、ティッシュにくるんで言う必要があるよな……。どうしようか? そうゆうの案外苦手なんだよ、俺って。ガンです。違うな〜。ガンかもしれません。いや、これもまだはっきりしすぎか? ガン、だったらよかったのにね……。なんで願ってるかなぁ。千人中九九七人がガンだと言いました。全然、だめだめだぁ〜〜。だいたい、残り三人はなんて言ったんだ……。どうする、どうする、どうする、ど、う、す、るーーーーーッ♪ あっ、歌ってる場合じゃなかった。思うに、ガンってのが直接的すぎるんじゃないかな〜。別の言葉で置き換えてみよう。G・A・N! ガンッ!! だめだよね。あなたは〜、も〜う、わすれたかしらぁ〜♪ あか……、どこがガンに繋がっていくんだ? つーかさあ、こんな大事なこと言わなくてもわかるだろ……。はずかしいこといわせんなよ……。言わなきゃわかんないよっ! はっきり言ってよ、私をっ! 私を愛しているのならッ! 伝わってこないよ、あなたの愛が信じられない……。そうだよね、言わなきゃ伝わんないよね。だめだ、だめだ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ。僕が本当にやりたかったことってなんだったんだ? 大学だって……、大学に入りたかったのは母さんの方だろ? 僕は、本当は……。今しかないよ、今しか。今、本当のことを言わなかったら、僕は僕は僕は、ずっと、このさきずっと後悔することになる。だから、言わなくちゃ――。
「次の方どうぞ」
やつれた、四十過ぎの男が入ってきた。髪の毛は薄く、頬もこけている。目つきだけがやけに鋭かった。
「僕は、大きくなったら、医者になりたいです」
あれ? じゃあ、私って、今なにやってたんだっけ? そうだそうだ。ガンです――、僕は素っ気無くもそう告げた。