第219期 #9
学園の卒業生の証としてラピスラズリの宝飾品が渡される。指輪だったり耳飾りだったり首輪だったり。外に羽ばたいて行っても、いつも一緒だという証だ。
そう、いつも一緒なのだ。今の私にはもうただの監視装置にしか思えないけど。
ただの通信機として、卒業生同士が楽しんで使っていることもあるらしいが、血の契約を交わした魔法がかけられているわけで、一種の呪いみたいなものだ。
俗にいう白魔術や精霊魔法を学び、外に出て、人々の助けとなるために、学園側から依頼がくることがある。
ただ、卒業生の数は多く、当然全員を把握しているわけではない。
故に説明をちゃんと受けて卒業したにもかかわらず、意外と売りに出す人も多いらしい。物が宝石なので、普通に価値があるのだ。
呪いのせいか、私が盛大に迷子になったときもこの耳飾りは離れなかった。よく割れもせず、千切れもせずここに居続けたなと感心する。
そんな石を弄りながら、聞こえる声に適当に相槌を打っていた。
「そう言えばさ。道中、雇ってやるって話、誰かにした?」
「は?」
道中?
「その仕事が終わったら、自分のことろで働けば? って言ったんでしょ?」
「誰に?」
言っておいて、そう言えばそんな話をしたことがあったような気がしてきた。
「ほら、迷子になる途中で……」
「あ」思い出した。
盗賊の中に学園の卒業生が混じっていたのだ。いろんな国を見て回りたいと思って暫く旅をしていたのだが、お金が底をついて盗賊に交じって旅をしているのだという、なんとも合理的なようでそうでもない理由でそこにいた彼女に、そう言えばそんなお誘いをしたのだ。
「あなたを見つけてくれたのも、彼女なのよ」
失せモノ探しが得意なんです!! って来たときは笑ったわよね、と失笑する相手に、私は失せモノだったのかと苦笑いする。
「暫くこっちで仕事してもらってたんだけど終わったから、そっちに向かってもらっているから」
「は? それいつの話よ」嫌な予感がする。
「今日、明日ぐらいには着くんじゃない?」
「は?!」
大きな声が出て、庭の木にとまっていた鳥達が一斉に飛び立った。
遠くで「は〜い」と女中が玄関に向かっていく。
「もっと早く教えなさいよ!!」
「そういうのは感じるものじゃないの?」
チッと舌打ちをして、通信を一方的に切って、玄関に向かう。
女中が玄関を開けると、新しい風が舞い込んできた。
運命に導かれて、出会いと別れを繰り返し、これからも生きていく。