第218期 #4

終わらない路線

_______「どこ行こう。」
2人の会話はまなかの一言で始まった。
今、早朝の東京駅にいるのだがどこにいきたいのかが不明瞭なまま来てしまった。
「とりあえず、山手線で浜松町でない?」とゆうかは提案した。
「そうだねゆうか。山手線ホーム、行こうか」

手を取り合って向かった4番線ホーム。
足を踏み入れた途端、うぐいす色の車両が目に飛び込んできた。たまたまホームドアが開いたので2人は乗った。

辺りを見回したところ私たち以外に誰もいない。車内は薄暗く、モニターも付いていない。しかし2人を乗せたままこの車両は動き出した。
アナウンスもないまま走り続ける。
「ねえ、まなか大丈夫これ?」
と、ゆうかの声が響き渡るが何も音がしない。まなかは恐怖のあまり石像かのように固まってしまっているのだ。

恐怖に怯えるゆうかを差し置いて、車両は動き続ける。まるで止まる事を知らない車のように走り続けていた。最後に彼女の視界に映ったのは終わりの見えないトンネルであった。




________「昨日未明、埼玉県上尾市の線路内で正体不明の車両と少女2人の遺体が発見されました。」



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