第216期 #3
足音の響き、コリドール。壮大な古代の寺院をとりまく回廊。
異教徒の男が内庭をみながら歩いている。枯れ井戸がある。緑の茂みが木陰を作り
白い石畳の中庭は涼しげで強い陽ざしも気にならない。
この空気と石の建物は感動
的だ。 なかにはにはにはにわとりが、、、早口言葉が、楽しさ微笑をさそう。
熱い空気もこの回廊ではさわやかだ。舞い上がるハトのように外から見ればやまのように、
巨大な石の教会も、
中にいてみれば、いまはなき人の憩いがしのばれ輝いている。 ざわめきも石畳に吸い込まれるようだ。 そぞろ歩く異教徒の足音だけがすこしの迷いのあるように回廊を伝わってかえってくる。
よく聞こえる。足音が回廊を駆け回っている。
ふしぎだな。歩くことを世界にふれ回っている様だ。それが、それが異教徒のほっとする思いと記憶をよみがえらせる。
あか巻きがみき巻紙きみへの思い、、、
人のおこない、やさしくなかった過去も、記憶も、、、 思いは伝わっていたと、、、
かわいた思い出のあと、きっとあの人は泣いていただろう。思いは伝わっていた、、、
それなのに、何も起こらなかった。ドラマチックなことは、、、
異教徒は喜びより悲しくなった。
終り