第215期 #4
昔々あるところにお爺さんとお婆さんがおりました。
お婆さんには浮気相手がいましたが、お爺さんには愛人と呼べるような人はいませんでした。
お婆さんは気の弱い性格だったので、浮気相手に強く求められると断ることができなかったのです。
この頃はお爺さんも決して人に強く言える性格ではなかったので、お婆さんの浮気を辞めさせることはできませんでした。
大きな桃は拾われないまま海へ流れ、輝く竹が竹藪の中で見つけられることはありませんでした。
しかし、お爺さんとお婆さんは不老不死の桃を食べ、話は現代へと続きます。
お爺さんとお婆さんは2020年のオリンピック特需を期待して、東京へ上京することにしました。
二人は上野で”G-Bar”という喫茶店を開きました。
昔の生活様式を取り入れたスタイルは、若者をはじめ、シニア夫婦に人気が出ました。
もちろん外国人旅行客にも人気だったので、二人の喫茶店経営は順風満帆だと思われました。
しかし、中国の武漢からコロナウイルスが流行したため、オリンピックの開催は延期され、外国人旅行客はもちろん、外出が自粛されて喫茶店経営は大きく傾きました。
お爺さんとお婆さんは東京に残りましたが、しばらく店を閉じている間、二人だけでいる時間が長くなりました。
お爺さんはテレビを見ながら、どうして浮気をした女性タレントは仕事がなくなるのに、男性タレントは浮気をしても仕事があり続けるのだろうと考えました。
「浮気者のconfidenceとは此れ如何に?」と思ったのです。
お爺さんはいくら考えても、浮気という行為を許すことはできませんでした。
しかし、自分だけでも過去のお婆さんのしたことは、水に流そうと思いました。