第215期 #3
「あれ? どうしたの? こんな夜に奇遇だね?」
なかなか眠れなくて、一枚だけ上着を羽織って外に出たら、彼女に出会った。
「私は夜のお散歩。雲一つない日の夜だと、たまにしたくなっちゃうんだ。危ないとは思ってるんだけど、どうしてもしたくなっちゃうんだよね」
俺の前をてくてく歩きながら、彼女は独白する。
「君は、君を待ってる人がいるんだから、こんな危ない事なんてしないで、早く帰った方がいいよ。あの子は、君がいなくなったら、きっと悲しむと思うから」
そこまで言うと、彼女は俺の肩を掴んで、家の方へと押し出した。
「私はもうちょっと歩くから、君は帰った帰った」
俺は、言われるがままに、帰途につく。
かすかに、彼女の声が聞こえた。
「はぁ。今日も月が綺麗だなぁ……」