第215期 #2

聴こえる

ある日、学校で素敵な歌声を聞いた。今は使われていない、旧校舎二階の一番端の教室。音楽室じゃないのに、ピアノが置いてある。そこから聞こえてきた、透き通るような、溶けていくような歌声。私は思わず聞き入ってしまった。心に語りかけるような、そんな歌声だった。教室を覗くと、私と同じ制服を着た、女の人が立っていた。5時を告げるチャイムが鳴って、「帰らないと!」そう思って、歩き出そうとすると、後ろでヒラヒラと音がした。振り返ると、さっきまで女の人がいたはずの教室には誰もいなくて、『また聴きにおいで』と書かれた紙だけが残っていた。



Copyright © 2020 金木 世莉 / 編集: 短編