第211期 #5

愛着

 なんだろな、これ。物に感じる特異な感情というか、感覚というか。
 私はいただき物の、ハーブティーを淹れながら浮ついた頭で考えていた。

 小夜ちゃんが言っていた、「何選んだらいいかわからんかったから、こちゃこちゃした感じになっちゃった」という台詞を思い出す。
 誕生日プレゼントだと手渡された紙袋の中には、淡い春らしい花の飾りが目を惹くラッピングに包まれて、小さな可愛らしいものたちが福袋状態で入っていた。中身は入浴剤がいくつかと、美容パックと、ハーブティーと、クマの食器用スポンジと……。

 そこで、「ああ、あるある」と思った。この手法は私がプレゼントを選ぶのに迷って取る方法と同じだなと。相手の趣向がわからなくなると、無難な物ばかりを多数寄せ集めてしまいがちという、そんな類の。


「ねぇ、これ淹れるのに3分も掛かるよ。紅茶かと思ったら3分も掛かるってことは、これ紅茶じゃないね。これハーブティーだね」

 側に居合わせた夫にどうだっていいような、独り言みたいなことを言う。どうだっていいことなので、夫は「ああ……」と聞き流している。大して相手にしてくれなかったことなど私は気にも留めない。
 さて、この『昼下がりのレモンハーブティー』はどんな味かな。ティーパックから浸み出すまでの3分間、心なしかそわそわしつつ待っていた。

 はぁ……、こんなハーブティー如きでなんでこうも忙しいんだろ。本来なら、ハーブティーって気持ちを落ち着かせる飲み物なんじゃないの? 馬鹿みたいだな、と私自身に呆れてしまう。
 たった3分。その時間が私をじらつかせている。待っている間、微かに優しい何かのハーブの香りが漂っていた。


 その後、ちゃんと出来上がったハーブティーの香りを堪能すると共に、啜った。ふんわり口の中で広がるレモンやハーブが混じったものを味わいながら、そういえば、あの子はいい香りの物が好きで色々持ってたなとか考えてみたりする。
 そうか。だからあの詰め合わせには、いい匂いのものと可愛い物がひしめき合っていたんだなと、勝手に納得した。

 どれもが単なる消耗品には違いないとしても、小夜ちゃんが選んでくれたということが、私にとって何らかの特別な要素として加点されているというのは事実だった。



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