第209期 #8

運命遺伝子

みなさんは『運命』という言葉の意味をご存じだろうか。簡単に人でいうとその者の定め、めぐりあわせ、といったところだろうか。この言葉を用いると、運命の人、運命の出会い、などと様々だ。上記で上げた『運命』の例は良い運命だ。しかし、中には悪い運命も存在する。事故にあう、投資に失敗し破産する、死ぬ。これらは偶然ではない、必然だ。もし偶然ならばこんなにも社会がうまく周り、世界の技術が発達するとは到底思えない。そんな中、運命は変えられないとよく耳にする。だが、もし運命を好きなように変えられるとしたらあなたはどうするか。


「余命6か月です」
医師にそう告げられた。すでに癌が他のところにも転移している状態だった。仕事に没頭するあまり健康診断を怠った結果がこれだ。もう少し早く見つけてれば。孤独で癌で死ぬなんてあんまりだ。呆然と座りつくした俺をみて医師は問いかけた。
「癌で死ぬは嫌ですか?」
「当たり前だ!!!!」
正直キレそうだった。こんな質問をしてくるなんて医師としての自覚はあるのか。
「では、変えてみますか?運命」
一瞬耳を疑った。俺はまだ生きていられるのか?医師は話を続ける。
「人は生まれた時からすでに運命が決まっている。人だけでなく動物、植物など生命体を持つもの全てだ。そんな中、人は必ず遺伝子を持つ。恐らくあなたの家系は癌で亡くなった方がいるのではないか。運命遺伝子が癌で死ぬことになっている。これはかわいそうなことに遺伝したのだな。」
その運命遺伝子とは何だ。すぐに問いかけた。
「単純なことだ。運命を決定する遺伝子のことだ。運命遺伝子が作られ、運命が決定してしまえばだれもその運命に逆らうことはできない。ただ現代では技術が発達したため、遺伝子組み換えというのができるようになり、遺伝子を取り換えることができるようになった。ただこの手術はまだ世間では認知されていなく、特別であって‥…」
つまり俺はまだ生きていられる…?
俺はうれしさのあまり有頂天になり、その後の医師の話は覚えていない。
 
俺は自分の家のベッドで目が覚めた。机には手術を受ける契約書と診断書などの資料が置かれていた。無事手術は成功したようだ。不思議なことに料金は無料だった。怪しい気もするがまぁいいか。俺の人生が明るくなったような気がした。俺は元気よく会社へ向かった。
6か月後 俺は死んだ 死因は車に轢かれそうになった子供を助けて死ぬ 勇敢死だった。



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