# | 題名 | 作者 | 文字数 |
---|---|---|---|
1 | 答. | テックスロー | 1000 |
2 | 小山さん | イワタアヤ | 467 |
3 | 終わりのある恋 | 秘めりんご | 917 |
4 | 地球平面説 | 常口 輝遊 | 864 |
5 | 割れ鍋に綴じ蓋 | わがまま娘 | 998 |
6 | 図書館流刑 | ゼス崩壊 | 1000 |
7 | 名探偵朝野十字の事件簿:美貌の報酬 | 朝野十字 | 1000 |
8 | Rain on a roof | 世論以明日文句 | 855 |
問. 以下の問に答えよ。
45個のリンゴが34個の籠に入っている時、ほかの籠に入っているのは何か。
答. 夕日
(解説)
まずはこの入社試験を課す会社のことを紹介したい。
株式会社ヒマキ。電動巻取機械メーカー最大手。創業者は島木幾多郎。総合商社マンとして海外を飛び回る彼は三十歳のときに出張先で手動巻取機を偶然目にし、その魅力に目覚める。帰国後すぐに会社を辞め、実家の物置に研究所を作り、巻取機の研究に日夜没頭する。そうして完成した日置式巻取機一号、通称「ヒマキ」は当時の業界紙の表紙を飾る一大ヒット商品となった。江戸っ子の島木は自分の名前を発音する際いつも「し」が「ひ」になってしまうこともあり、「ヒマキ」はそのまま彼の新しい会社の名前になった。初年度にヒマキは国内巻取機市場シェアNo.1を達成、巻取機メーカーとしての確固たる地位を築く。
海外進出が本格化したのは1984年。当時の巻取機の世界市場の約八割を占めていたのはアメリカだった。日本の巻取機市場が頭打ちになる中で、島木社長はニッポンのヒマキで米国の市場を席巻すべく、彼の地に足を踏み入れた。
「売れない」
在庫の山に頭を抱える島木社長に「ダイジョブよー」といつも明るく声を掛けるのは現地で娶った妻のジェシカだった。がっしりとした黒い肌、愛らしい目に赤い唇。ジェシカは「アップルパイが焼けたわ」と大皿を抱えて西日差すリビングへやってくる。
「最近毎日アップルパイだな」
「そうよ、おじさんから送られてきたの、ほら」
妻の指さす方を見ると、倉庫に入りきらず自宅も占領し始めた巻取機の、籠の部分にリンゴが入っている。島木社長は呆れた顔で妻を見る。
「ごめんなさい、だって置く場所ないんだもの」
妻は悪びれず洗濯物を取り込み始める。シーツを物干し竿から洗濯籠に放り込んだとき、ちょうど夕日が沈んだ。洗濯籠に夕日が入ったように見えた島木社長にある閃きが降りた。
「夕日……日置式。籠、そうか! ジェシカ、お手柄だ!」
入社式で島木社長の渋枯れた声で語られるこの講話は、社員の脳裏に強くこびり付き、以後離れない。うわべだけの知識では到底たどり着けないその深淵は、離職率0%を誇るヒマキ社員以外は決して知ることができず、知られてはいけない。よってこの設問に軽々しく「夕日」と答えた志望者は、容赦なく落とされ、その履歴書は「注視」のフォルダに保管され続けることとなる。
小山さんのことが気になってしようがない。同じ会社の営業の人で営業だからおもてに出てしまうことが多いため事務員のあたしとの接触は時間にしたらたったの10分くらいなはずだ。こんな気持ちを抱いたのはほとんど最近で出会って(入社して)もう5年も経っているのにたまたま一緒のエレベーターに乗り合わせたときにハッと意識をした。もし、今何かしらの故障でエレベーターが止ったとしたら。と仮定しそれは既にかなりの妄想を掻き立てあたしと小山さんは狭い個室に閉じ込められ酸素が薄くなる中意識が朦朧とする中自然に抱き合いキスをかわし大丈夫? うんだって1人じゃないもん。そんな些細な会話をしつつ一時の抱擁を味わう。なるほど小山さんはあたしの妄想の中では立派な彼氏なのだ。
「着いたよ」
エレベーターが5階にチンと陳腐な音を鳴らして着いたときあたしは多少ニヤついていたので小山さんは不気味そうな顔をし口角を少しだけ上げた。始まりそうで始まらない恋。そんな曖昧なときが一番至福の時なのかもしれない。片思いは勝手に妄想できるもの。小山さんはいつも遅く会社に戻ってくる。
恋がしたい!
出会い系サイトで恋人探し。
ショッピングサイトの感覚で、好みの男性を探す。
大卒、高収入、年上、非喫煙者、イケメン、、、
条件を絞り、好みの男性にたどり着く。
いいね!
めでたくマッチング!になる確率は低い、、、
わたしはバツイチ子持。
幸い、好みの男性とマッチングし、
1週間ほどして、会う事になった。
「これからいきます。30分くらいで着きます。」
待ち合わせは、最寄り駅改札横のキヨスク前。
「みおさん?はじめまして。」
少し遅れてきたイケメンさんは、
弱々しい声を発した。
写真は古いものを載せてもわからない。
5歳違いはこんな感じか?と思いつつ、、、
「居酒屋でいいですか?」
「どこでも」
商店街に入ってすぐ、呼び込みのお兄さんに
声をかけられた。
「ここでいいですか?」
「はい。」
早速、お決まりの自己紹介。
家族構成やお仕事のこと。
年齢は?やっぱり、5歳年上。
独身、2つの会社の社長。
「結婚したら、お小遣い接待なんかもあるから
40万円くらい、家に入れるのは30万円くらいでいい?
家は目黒区のマンション、ローンなし。
ハムスターが一匹。
6大学を出て、海外の大学でMBAを取得。
大手企業でシステムエンジニアとして働いてる時の仲間と企業して、今社長をしてます。
将来は、会長になって、ハワイで暮らす予定。」
なんと!高学歴!高収入!将来設計まで!
「お付き合いしてもらえますか?」
「え?私なんかで本当に良いですか?ホントに?」
そんな幸運なこと、あっていいの?
「私なんかでよければ。」
お付き合いが始まった。
大人同士、深い関係になった時のこと。
SNSのやり取りで、ブロックされたり、
変なメッセージがやり取りの合間に入ったり、
アカウントがエロサイトに登録されていたり。
“こどもが売られてるのに気づかないバカ親”などの誹謗SMSメッセージがあったり、
土日はパッタリ連絡なし。
「お前と所帯をもちたい!」とも言ってくれ
初めて味わう不安感や幸福感が盛り沢山。
そんなやり取りにも疲弊し
別れては戻ること3回。
3度目には精神力を養うことを決意した。
いま既読無視。
自然消滅なの?
彼、年齢詐称、干支は一緒55歳。
子供2人別居、離婚調停中。
嘘から始まったオトナの恋。
そんな終わり方ってある?
僕の彼女は地球平面説が正しいと言って聞かない。
晴れた夏の日、公園で彼女は手に持ったビー玉を弄びながら言う。「もし地球が丸いんだったら、このビー玉たちを床に落とせばどこかに転がるはずじゃないですか?」と。とはまあ、限らないんじゃないか? とは思った僕だけど、地学の授業はおやすみタイムだったから、詳細な反論はできない。僕が答えあぐねていると、彼女はビー玉を床に落とした。小気味のいい音が響き、少し跳ねたあと、それはどこにも行こうとはせずにそこにいた。
セミの声と夏の日差しだけが僕らを包み込む。
「ほらね?」と彼女はビー玉を拾い上げながら続ける。「ビー玉は転がらない。ということは、地球が平面ってことなわけですよ」と。そうなのかなあ。地球ってめちゃめちゃでかいから、よくわかんないけどその関係で平面っぽく感じるだけなんじゃない? と言うのは何回めだろうか。
彼女は一年前から、確かに狂い始めていることを僕は知っている。始まりは、そうだ、キャンプのとき。二人で行ったキャンプ、星空が出て綺麗な夜、彼女はいきなり声を荒げながら、でも何故か涙を流しながら、せっかく貼ったテントをぐちゃぐちゃに壊し始めた。医者にも行ったが、適当な薬を処方されて、それでも彼女はいつもどこかがおかしいまま。
半年くらい前に、夜中にいきなり会いに来てくれたことがある。君はそのときも泣いていて、でも僕をみた途端どこか嬉しそうで。それまでの僕は心のどこかで君を疎ましく感じていたし、彼女がまともだったら、という空想(と言い切ってしまっていいのだろうか?)をよくアパートの天井を見つめながら浮かべていた。それは元々の彼女を神格化していたとも取れる僕の弱さからくる愚行であったろう。ただそれも、涙を拭いながら言葉を発した君が変えた。君は言ったんだ。
「地球平面説って、知ってます?」
それからは毎日、この公園で、地球平面説を僕に語りかける。夏はもう終わろうとしている。来年もこうしていられるか不安で仕方ない。
彼女は今日も、地球平面説が正しいと言って聞かない。
「みっちゃん達のケンカってもしかして……」
洗い物を終えたいっちゃんが、電話を切ったオレの隣に座る。
「いや、違うよ。」
心配そうな顔をするいっちゃんに言う。
あのふたりがもめているときの原因は大抵泰雅の言葉に問題がある。
可愛さ余って憎さ百倍なのか、気持ちが振り切ったときの言葉が猟奇的なのだ。
普段は、その猟奇的な言葉も充希が意をくんで過ぎていくんだけど、充希も感情的になっていると何故か言葉通りに受け取ってもめる。
ただ、充希の気持ちが落ち着けば自然と消滅するのだ。ずっとそうだ。
でも、今回はいつもとどうも様子が違う。
きっかけはもしかしたらオレ達かもしれないけど、もともとあった問題が露見しただけなんじゃないかと思っている。
「トラちゃんてさ。みっちゃんのこと、食べたいくらい大好きなのに、なんで怒らせるようなこと言うかな?」
テレビのチャンネルを変えながら、いっちゃんが言った。
ん?
「泰雅、充希のこと食べたいって言ってたの?」
「ん? 結構前だけどね。みっちゃんが「充希を取り込んで一緒に生きていくって言われちゃった」って惚気られた」
何事かと思ったよね、っていっちゃんが苦笑いした。
「でも、それってトラちゃんはみっちゃんとそれくらい一緒にいたいってことなんだよね」
羨ましいと呟いたいっちゃんに「ヒトの細胞って半年で入れ替わっちゃうらしいから、半年は一緒にいようってことでしょ?」って言ったら、「バカ」って返ってきた。
「じゃあさ……」と言って、俺はいっちゃんを真剣な眼差しで見た。
「いっちゃんを取り込んで、オレの中の細胞が全部いっちゃんに置き換わったその瞬間オレも死ぬから、あの世で添い遂げよ?」
ふたりで見つめあったまま無言の時間が流れた。
「それ、怖っ!!」
いっちゃんがオレから離れた。
「こんなん言われて喜ぶの充希ぐらいだな」オレは天井を見た。
「トラちゃん限定だけどね」いっちゃんが苦笑いする。
「割れ鍋に綴じ蓋ってあいつ等のためにある言葉なんじゃねーかって思うのに、なんとなくかみ合わないことあるんだよな。鍋が割れてんのが悪いのか?」
「蓋も壊れているけどね」っていっちゃんは笑う。
あぁ、だからちょっと噛み合わないことあるのか。
「零くんはそんなお鍋さんで煮込まれる料理だね」
いっちゃんが言った。
「は?」オレの眉間にシワが寄る。
熱くて出たいのに出られない姿を想像して、焦がされる前になんとか鍋から出たいって思った。
借りていた本の返却が一日遅れた容疑で、俺は逮捕された。簡単な取り調べを受け、罪状は返却期限遵守義務違反と決まった。初犯なら執行猶予が付くのだが、残念ながら俺は二度目であり、即刻、図書館流刑に処されることになった。
唐突に手枷と目隠しを外され、光に目が眩んだ。辺りには背の高い書棚が幾列にも並べられている。どうやら俺は図書館の中にいるらしかった。目の前にはアンティークの瀟洒な椅子が一脚。そこに女が腰掛けている。歳は俺より少し上、二十代半ばくらいだろうか。黒縁眼鏡を鼻先に載せ、長い黒髪を耳の後ろで二つ結びにしている。女が口を開いた。
「今日から君の看守担当になった、早坂だ。宜しく頼む」
眼鏡のブリッジをついと指で押し上げ、それきり言葉はない。どうやら自己紹介はそれで終わりらしかった。
図書館での役務は想像以上にハードだった。書物の整理に、破れた装丁やページの補修に……次々と指示が下され息つく暇もない。一緒に過ごしてみると、言葉遣いこそ素っ気ないものの、早坂は案外可愛げのあるやつだった。手抜き作業には滅法厳しいが、丁寧な仕事にはぼそりとねぎらいの言葉をかけてくれたりする。早坂の要求に応えられるよう、俺は次第に作業に没頭するようになった。時々、そんな俺を励ますように、早坂がすっと目を細めながらこちらに微笑みかけてくれる。それが嬉しくて、我ながら単純だと呆れつつも、益々作業に身が入った。
月日は流れ、ここに来てはや一年が過ぎようかという頃、突然、憲兵達が俺の前に姿を現した。どうやら真面目に働きすぎた結果、予定より刑期が短縮されることになったらしい。俺は憲兵達に有無を言わさず羽交い締めにされ、身柄を拘束された。図書館から連行される間際、早坂が俺の方へ走り寄り、躊躇いがちに口を開いた。
「今までありがとう……本当に」
それだけ告げて、あとはずっと顔を伏せたまま俺を見送った。
元の生活に戻ってからも、心の一部がすっぽり抜け落ちてしまったような感覚が、澱のように胸に留まり続けた。借りてきた本を開いて活字を追っても、まるで頭に入らない。無意識に、端の折れたページを指で直してしまう自分がいた。
その日が訪れると、俺はカレンダーの日付をもう一度確認し、急いで施設に向かった。エントランスを抜け、カウンターの司書に本を差し出す。
「すみません。本を返却したいんだけど、実は期限を一日過ぎてしまって……」
近代法の授業を取っている私は、レポートの課題を、妻を殺したため服役中の著名な推理作家、関祐介に決めた。事件は1997年。まだ固定電話が主流の時代だった。私は何度も刑務所に通い長い手紙を受け取った。彼の主張は以下の通りだった。
その日講演会を終え自宅に電話してこれから帰ると妻に告げたが、直後に弟から連絡があった。弟は家電修理店を経営しており、レトロで大型のステレオセットの修理を頼んでいたのだが、修理が終わったとのことで、弟の店に立ち寄りステレオセットを積んだトラックに乗せてもらって自宅に向かった。家につく直前に再度電話したら妻が出なかった。不審に思いガレージで荷物を降ろす弟を待たず玄関に向かったら鍵が掛かっていた。妻を名を呼びつつベランダから窓を割って入った。リビング、キッチンと妻を探して寝室に入ろうとしたら施錠されていた。台車にステレオセットを積んで弟がやってきたので、二人でドアに体当りして中に入った。妻は頭部を鈍器で殴られ死んでいた。部屋には裏庭への窓とドアがあったが、どちらも施錠されていた。私は妻を殺してない。
「裏庭へのドアは外から鍵を掛けられるの?」
と新之助君が聞いた。
「うん」
「わかった。関祐介が裏口から入って奥さんを殺したあとで、寝室の前に戻って弟が来るのを待ってたんだよ」
私は関祐介の大ファンなので納得できなかった。
「先輩はなんて?」
先輩はなぜかいつも部屋を薄暗くしている。
「三つ質問しよう。妻殺害の動機はなにか。犯人にアリバイはあるか。犯人は誰か」
それを聞きに来たのにコイツ何言ってんのと思ったが現役美人女子大生なのでぐっとこらえた。
「関祐介先生は奥さんを愛してました。以前奥さんが浮気したときそれを許し、男に手切れ金を払って奥さんを守った話は有名です。関祐介先生は絶対犯人じゃないです」
「犯人は弟だ。関祐介が電話したとき、妻は弟と一緒にいた。技術者である弟が電話に細工して、兄からの自宅への電話を彼女の携帯に転送させた。尻軽な兄の妻に不倫関係をバラすと言われた弟は逆上し、その場で彼女を鈍器で殴って殺害した。トラックに死体を積み込み、兄が来ると車で送ると言って兄の自宅に行った。兄が妻を探し回る間に死体を裏庭から運び込んだ。彼は逢引のために兄の妻から裏庭へのドアの合鍵を渡されていた」
そのあと新之助君にお茶に誘われたけど、関祐介先生を犯人扱いしたので断った。
仕事を終えて、夜、最寄り駅のホームに降り立った。改札を出て、家に向かう。
今日一日、雨が降っていた。持ってきたビニール傘は、英字新聞を切り貼ったような柄をしていた。傘を差し、歩き出すと、雨が傘を叩いて、メッセージ性の無い音を立てた。
"...Though the sales of home furniture and home fashion, VSS has sought to provide USA to provide USA with "with thehrabundant home decoration that is as splendid as that of the Europe." To achieve this goal, it was necessary to set prices which make purchasing easy for all customers, as well as to ensure high quality and functionality. Therefore, VINTAGE STYLE STORE added distribution functions to the conventional business model of "manufacturing and retail." We established the new business model of "manufacturing, distribution and retail," In order to pursue low prices, quality and functionality, we produce almost all of our products in Asian countries, thus reducing manufacturing cost. Furthermore, the..."
雨音は、家に着くまで、音を奏でていた。