第205期 #5
僕は一人暮らしで寂しかったので、小さな一尾の雄猿を飼った。
ある夜、僕は気まぐれに、猿に自慰を教えてみた。
その日から、猿は自慰が辞められなくなってしまった。
僕が会社から戻ると、部屋中に猿の精液が散らばっていた。
ある夜、僕は猿が眠っている間に、猿の陰茎を切り落とした。
生きがいを失った猿は、酷く落ち込んでいた。
その日から、猿は在った所に出来た穴を、指でほじってばかりいた。
部屋の隅から動かない猿の姿は、みすぼらしかった。
ある夜、僕は眠っていると、目に痛みを覚えた。
起き上がると、僕の両目は猿に潰されていた。
僕の目を潰した猿は、部屋の外へ出て行って、もう部屋に戻ってこなかった。
僕は仕事を失い、盲学校で点字を覚えるところから、人生が戻ってしまった。
あの日から、僕は夜になると、記憶をたどって自慰をするようになった。
生きがいを失った僕は、盲学校に通う以外に部屋を出ず、みすぼらしくなっていた。
ある日、学校の先生は気晴らしにと、僕を車で近くの山まで連れて行ってくれた。
僕は目が見えなくても、山の自然を感じられることに感動を覚えた。
その日から、僕は部屋の外へ出かけるようになって、山の自然を感じられる所にベンチを見つけると、そこで山の自然を感じながら自慰をすることを生きがいにして生きている。