第204期全作品一覧

# 題名 作者 文字数
1 名探偵朝野十字の完全安楽椅子推理 朝野十字 1000
2 スライドショー ぺさ 355
3 オイツキ 柚根蛍 1000
4 なんて事ない賭け ウワノソラ。 998
5 ベルゼブブの遣い ゼス崩壊 991
6 ふつうです テックスロー 993
7 このよのものと ハギワラシンジ 948
8 もっと上へ わがまま娘 999

#1

名探偵朝野十字の完全安楽椅子推理

「指の太い人は鼻の穴がでかい。指の細い人は鼻の穴が小さい。人類はそうやって進化してきた」
「なぜですか」
「でなきゃ鼻をほじれないだろ」
「体が小さい人は手も鼻も小さいし、大きい人は手も鼻も大きい。それだけの話でしょ」
「手だけ大きくてやたら指が太いが体の小さい人はどうするのだ」
「そんな人、見たことありますか」
「見なくてもそんな人の鼻の穴はでかい。それがロジックだ。ロジックを信じ切る覚悟があるか否か。それが名探偵とその他大勢を分かつのだ」
「そんなことより私のさきほどの謝罪は受け入れてもらえたのでしょうか。先輩のものをなくしてしまいました」
 先輩は持病をこじらせ入院していた。何度も電話がかかってきて見舞いに来いと言われ、その後経理課の私の上司に先輩から直接電話が入り、上司の命令で仕方なく見舞いに行くと近くの商店街の福引が今日なので自分に代わって福引を引いて来いと言われた。
 今日は休日で商店街はとても賑いたくさんの人で混雑していた。ここはとても有名な商店街でしばしばテレビ局が取材に来る。実際なんということもなさそうな焼鳥屋の前でお笑い芸人がカメラに向かってレポートしているのを見かけた。
 福引が当たって福袋をもらって帰ろうとすると、母親と娘らしき二人連れが困っている様子だった。
「5歳の息子とはぐれてしまったんです」
「手分けして探しましょう」
 母親は娘にここで待つよう言い、商店街を東に向かった。私は福袋を娘に預け西に向かった。それらしき男の子を見つけて名前を聞くと「圭太」と答えた。圭太君を連れて戻ってくると、さきほどの場所には誰もおらず、先輩の福袋もなくなっていた。
「三つ質問しよう」
 携帯したら先輩は言った。
「その母親は福引に当たったか。娘はいくつぐらいに見えたか。近くの電柱にスピーカーがついているか」
 母親も私と同じ福引で当たった福袋を持っていた。娘は小学生くらいだった。電柱には拡声器のようなものがついていた。
「娘は一人残され心細くなり、福袋を二つとも持って母親のあとを追った。息子を見つけられなかった母親は娘とともに東側にとどまった。なぜなら福引抽選コーナーの東側に商店街のインフォメーションセンターがあることに気づいたからだ」
 まもなく拡声器からアナウンスがあった。
「XX商店街インフォメーションセンターです。5歳の圭太君を探してくださった男性の方。センターでお母さまがお待ちです」


#2

スライドショー

四畳半のぼろアパートの一室に
似つかわしくない机は
田宮にとって必要不可欠なもので
あった。

いつものように、その机に向かい椅子に座りつっぷすように
して、ノートに筆を走らせる

それは物語とは言えない支離滅裂な文章
だが、田宮は、書かずにはいられなかった。

書かなければなにもない自分になってしまう気がして、恐ろしくて
震えながら怯えながら
ただひたすら、筆をはしらせた

物語とは言えないような言葉の羅列が
増えて行く、
その言葉は、田宮の叫びや愚痴を
表しているだけの
凡庸な、まったくつまらないものに変わっていった

死にたい、つらい、苦しい、変わりたい
孤独、一人、
消えたい、金、女、
才能、幸せ、成功

書きながら泣きながら、
嗚咽を吐きながら
平静を保とうするさまは
まったくもって普通ではなく

いつか田宮が望んでいた、
才気あふれる異常者のようだった


#3

オイツキ

 昨日、わたしのママが死んだ。
 それに、パパも死んだ。

 ママは事故だった。でも、パパは自殺だった。


 ……いなくなっちゃった。

 わたしは泣いた。えんえんと、お顔が真っ赤になるまで。
 でも、一緒に住んでいたお婆ちゃんはそんなわたしを泣き止むまで慰めてくれた。
 一緒に泣いてくれたの。

 そうしてわたしにこう言ったの。

「お母さんとお父さんは、お月様になって見守ってくれるわ」
「お月さま……?お星さまじゃなくて?」
「そう、お星様よりも大きな大きなお月様よぉ。いつも一緒にいてくれるわ」
「そうなんだ、お月さまになっちゃったんだ……」

 お月様にいるんだね……決めた。

 私は、その日冒険に出ることにした。
「いってくるね、お婆ちゃん」

 眠ったおばあちゃんにいってきますの挨拶をする。
 夏は暑い、だから涼しいサンダルに白いワンピース姿で私は夜の街に出たの。



 むし暑い、電灯もないし、辺りには田んぼだけ。
 夜って、こんなに寂しかったんだ。

 やっぱりパパとママがいないと、寂しいな……

ゲコゲコ……

 カエルさんの歌が聞こえてくる。
 本当ならいつもわたしだって寝ている時間なのに、不思議だな。

 辺りは真っ暗で、ちょっと怖い。でも、空にはお月さま……パパとママがいるんだ。
 会えるかな、わたしが月にたどり着いたら、また会えるかな。

 でも、どうやってお月さまのところに行くんだろう。走ったら近づくかな?


 てくてく、歩いてみる。
 でもお月さまは近付かない。
 たったっ、走ってみる。
 それでもまだ足りない。


 わたしから逃げてるのかな。パパとママは照れ屋さんだから、会うのが恥ずかしいのかも?

 ペタペタとサンダルの音を響かせながら、一定のリズムで進んだ。
 すると、小さな商店街が見える。

「誰もいない……肉屋のおじさんも、本屋のお兄さんも寝てるのかな」
 昼間はたくさん人がいるのに、今は私だけ。
「もしかして、今起きてるのってわたしだけなのかな……」


 そんなことを考えつつも、空に浮く月を追いかけて私は歩いた。
 それでも追い付かない。


「うう、嫌われちゃったのかな。もうパパとママには会えないのかな……」
 いつの間にか、大きな橋に来ていた。
 私は、気を紛らわそうと、橋の上から川を見下ろした。


「わあっ……!」

 そこには、水面に映り込むお月さま。
 こんな所に居たんだね、パパ、ママ。





 ボチャン

 水しぶきが舞う。
 やっとおいつけたよ。また会えるね。


#4

なんて事ない賭け

 貧乏性の私は、ルーレット付きの自販機で買う時には並んだ数字が止まるまできちんと見届けることにしている。

 当たったらいいのにな。て、淡い期待を込めて数秒間毎度待つのだが、当たることは滅多とない。
 それでも、私はこの刹那的な賭けを楽しんでいる節もある。

 高々、100円や120円の賭け。
 しかも損をすることなんてなく、他の自販機となんら変わらない品物が必ず出てくる。だから私の毎日の賭けは、衛生的なギャンブルの一種のような気さえしてくる。


――チャリン…。

 今日も私は自販機に向き合う。
 お目当は、いつものミルクティー。
 黒いボタンを押し込めば、数字のルーレットが回り出す。


――ピピピピピッピッ ピッ ピー……。



 あ……。

 結局、最後の最後の一桁が揃わない。
 仕方ないか、と思いつつも残念な気持ちが通り過ぎる。



 前、当たったのにな。

 ドキドキしたあの感覚が、自販機のボタンを押す度に頭を掠める。
 同じ高揚感を味わいたくて、何度でも自販機のルーレットに期待してしまうような気もする。




――そう確か。前、当たったあの時は。


 お土産を渡しに、いそいそと向かってた矢先。自販機で飲み物を買った時だった。
 ごみごみした路地の自販機で購入ボタンを押すと、ルーレットが回り始め、揃い、然程主張することなく再びボタンが『点灯』したのだ。

 当たったどうかも微妙だったものの、あの人の好みを慌てて考えながら、もう一度ボタンを押してみるとジュースがガコンと確かに落ちてきた。

 それだけで妙に嬉しくなって、自販機に恋の行方を祝福されているようか気さえして、気持ちが弾んだ。


 ドギマギしながら、冷えたジュースとお土産を渡すと、ラッキーですねとはにかみつつ笑ってくれた。

 そんな些細な高揚感が、未だに印象に残っている。



 ミルクティーのボトルを自販機下から取り出しながら、考える。
 あの人のことを、よくよく思い出そうとすると何だか目が眩んだ。


――ああ、冷たいな。

 ミルクティーのように、甘ったるい恋などではなかったな。
 夏の蒸し暑さと冷えた飲み物くらいの、温度差を感じる片思いだったかな。

 言葉の端々から、私は対象外なんだと察することは容易だった。だから、一方的に諦めたんだ。


 まぁ、今更なんて事ないけど。
 自販機に向き合う度、ちょっと思い出すだけでどうだっていいことだよ。



 ……どうでもいいんだけど、なんか胸がひりひりしてくるな。


#5

ベルゼブブの遣い

悪霊跋扈する魔界にベルゼブブという蝿の王が居た。暴虐たる蝿の王は人々が醜く争う姿を至上の喜悦とし、なによりの馳走とする。王は地上に三匹の蝿を遣わせた。特に優れた人間に蝿を取り憑かせ、世界を混乱に陥れようとしたのである。

一匹目の蝿は、ある大国の大統領に取り憑いた。大統領は議会を黙殺して軍の専横を始めた。世界のあらゆる紛争に介入し、多くの尊い命が奪われた。かくして世界は混沌の様相を深めた。
……蝿の王は爛々と瞳を輝かせた。

二匹目の蝿は、ある天才的な学者に取り憑いた。学者は狂ったような研究の果てに比類なき殺戮兵器を発明した。幾億もの命を一瞬で葬り去る兵器の誕生は世界を震撼させた。かくして世界は収拾のつかぬ狂乱に陥った。
……蝿の王は興奮に舌舐めずりした。

三匹目の蝿は、巨万の富を独占するある資産家に取り憑くべく地上に遣わされたが、資産家は蝿が取り憑く間際、病に倒れこの世を去ってしまった。
蝿は仕方なく資産家の奴隷となっていた男に取り憑いた。男は出自こそ卑しかったが、類稀なる明晰な頭脳を持っていた。男はその聡明さを見込まれ資産家の跡取りから信を得ると、残忍な手段を用いて跡取りを殺した。膨大な資産が男の手に渡った。

やがて男は有り余る富を活用してある世界的な宗教の指導者の地位に登りつめた。男は世界に散らばった信者を扇動し多くの罪のない人々を異端者として処刑した。かくして世界は混乱の極みに達した。
……蝿の王は羽を震わせて狂喜した。

男に取り憑いた蝿はなおも懸命に働いた。他の二匹の蝿に負けじと必至に男の狂気を煽り立てた。全ては主君たる蝿の王を喜ばさんがためである。
やがて男はある大国の大統領を失脚させ麾下の軍を掌握すると、ある比類なき殺戮兵器をも手中におさめた。どんな手段を用いたか誰にも分からない。僅かに居たはずの真実を知る者は、とうの昔に物言わぬ骸と成り果てた。

もはや男に歯向かう者は一人として居なかった。男は世界の王となったのである。人々はただ一人の王を恐れた。王の御機嫌を伺いながら声を殺すように生きた。
次第に、人々は歪み合っていた隣人とさえ助け合い暮らすようになった。互いに争っている余裕などなかった。なにより恐れ憎むべき王がそこに居たからである。いつしか世界から対立や紛争は遠のき戦乱の火は絶えた。

かくして地上から争いは去った。
……蝿の王はがっくりと頭を垂れ、途方に暮れた。


#6

ふつうです

 あなたは鈍感です。九州の甘口醤油と、関東の刺身醤油の味の区別がつかないくらいには鈍感です。黒い色だし、同じ味なのだろう、という思い込みも手伝って、細かい味の違いは、鈍感なあなたにとっては大変わかりにくいと思います。あなたはおそらくそのとき、おしゃべりに夢中で、興奮していたのだと思います。あなたはエジプトで食べた、ラム肉を焼いたものをルッコラのサラダに敷いた食べ物の話に夢中で、一度関東の刺身醤油につけた鯛の刺身を、口に運ぶことなく、「中東の料理だと思うんだけど、すごいんだって、はえがすごいたかってる」九州の甘口醤油にくぐらせて口に運びます。三度ほど咀嚼して次の話をするために嚥下しようとしたとき、鼻孔を突き抜けるのは甘くてくどい匂いでした。あなたは「余った肉と野菜全部さー、ビニールで包んでそのまま捨てるんだぜ」としゃべりながら、この甘いのは何だろう、と頭の片隅で考えます。
 あなたは「ラム、食べたことある? ラム。頼む? ないか」と言いながら「すみませーん、ビール。さっきと違うのにしようかな、キリンください」と注文をしてからジョッキに残った黄色い液体を飲み干します。空のジョッキには想像上の動物が描かれていますが、あなたはそんなことは気にしません。私の席の、手つかずのビールにも全く気づきません。
 インスタグラムを更新しながら、あなたは私の目を見ずに話します。「俺もさ、いつまでもこんな関係でいようって思っているわけじゃないよ。いつかはしっかりとした仕事に就くし、英語だって勉強してるし、いつか分からないけど結婚だって考えてる」私はあなたのまっすぐな目が好きです。私はあなたがしてくれる世界の話が好きです。会計を済ませて外へ出ると、電柱の影であなたは私の肩を強く抱き、私の口に舌を入れようとします。私が眉をひそめて首を振るとあなたはどうしたの、とそこで初めて私に発言を促しました。
「妊娠したの」
 あなたのあごひげがわずかに震えたようでした。あなたは「分かった」と一言言いました。その小さな目はしばらく漂っていましたが、ついに私の目と合いました。
「分かった、結婚しよう、俺、働く」
 エジプトもインスタも自分探しも英語の勉強も、一瞬で過去のものになるくらいの強烈な引力が私のお腹の中にはいて、目の前のあなたはあまりに裸で、無力で、ふつうで、でも、どこかたくましくて、愛おしいです。


#7

このよのものと

 トレッドミルでウォーキングする。
 最近の日課。派遣会社が次の仕事見つけるまで、俺はフリー。夜勤が全然合わなくてやめた。今は営業の関さんが奔走してる。すまん。
 トレッドミルはYouTubeに繋がってる。
 俺は時間と体重、年齢を入力して走り出す。
 YouTubeで検索する。何検索しようか。
「このよのものとは思えない」
で検索する。
 このよのものと、で色々出てきた。このよのものと、はフリックが全部下段にフリックするから面白い。
 俺も下段だ。年収200万円。腰痛持ち。やべえ顔。このよのものとは思えない。
 たくさんの動画が出てくる。画面に。景色とか、風景とか。同じか。あとは食べ物とか、世界のB級グルメとか。それも、同じか。この世にはだいたいおんなじものが別の形で転がってる。
 俺は4,5キロのスピードで4,5キロの傾斜を付けて5分歩いてる。その間に画面にはこのよのものとは思えない風景が現れては消えていく。
 知らない世界の景色だ。これって撮影できるのかな。スマホで。そんなありふれたもので、こんなすげえ景色撮れるのかな。きっと嘘だな。そう思うことにする。
 歩きながらスマホで音楽聴いてる。もうウォークマンじゃない。ウォークマンもスマホも、もう同じようなもんだ。
『お前の言葉を待つ人は、お前と同じ絶望を持つ人』
 スマホからそんな歌詞とメロディーが、聞こえる。俺は深く同意した。その通りだ。そして逆も然り。同じこと。
 残り2分の歩行の中で、俺はこのよのものと、は思えないことについて考えた。なにも思い浮かばない。外を見る。眼下にはスクランブル交差点がある。ここは地元でも大きめの駅の近くにある。渋谷の何十分の一の大きさだけど、同じことだ。どっかの誰かにとってはこのよのものと、は思えない景色だ。現に今、俺はそう思ってる。この景色は何だろう。見ていると、今にも叫び出したくなってきて、駆け出したくなってくる。
「30キロカロリー消費しました」
 唐突にシステムが俺の歩行を中止させる。トレッドミルは止まって、何も写らない。
 ルール通りに手すりの汗を拭いて、次の人のことを考えて綺麗にする。次の人のことを考えて、行動する。いつもそう。鳥は自分のフン片付けないのに。
 そうか。
 俺は我にかえった。俺は鳥じゃない。


#8

もっと上へ

片方はリハの後、謝ることが多くなった。
片方は今までと明らかに変わってきている。
で、ふたりで地下の防音部屋にこもることが多くなった。

なに?

「アイツら、なんかあった?」
「は?」
「いや、ハヤトと姐さん」
「え?!」とカズキはビックリした。まさか気付いてないはずはない。
「お前、他人に興味あったんだな」
ビックリしたのは、そっちかよ……。
「ハヤトがさぁ。もっと上に行きたい、って思ってたってことだよ」
もっと上に行きたい、か。
リビングのソファから立ち上がって、俺はカズキの横に移動した。
「ハヤト、どうしてそう思った?」
カズキはため息をついて、俺を見て持っていたペンを机に置いた。

「小さなステージによばれてたことあったじゃん、姐さん。あれ、見に行ったんだよ、ハヤトとふたりで」
カズキは話し出した。
「じっと見てるから、気になって聞いたの。したらさ、自分よりも姐さんのほうが俺が書く言葉を正確に伝えられているんじゃないかって言うの。自分じゃなくて、姐さんが歌った方がいいような気がしたって言うんだよ」
そんなわけないのに、ってカズキが苦笑いする。
それでも、ハヤトはカズキの書いた言葉を伝えきれてないって思ったらしい。
「どうしたら、もっと上手くなる? って俺にきくの、アイツ。俺、歌ったことねーのに。でもさ、決定的な違いはあって、ハヤト、馬鹿だからさ漢字読めねーじゃん。言葉の意味もわかんないみたいで。で、あえてカタカナで書いたりしているんだけど、そしたら意味が濁ってんなって思うの。それをさ、姐さんは割と正確にイメージしてくるわけ」
今のハヤトに、それができるようになったらもっと上に行けると思ったんだとか。
「それで、アイツ新聞スマホ片手に読んでんのか」
初めてハヤトが社会面を読んでいるのを見たとき、槍でも降るのかと思ったよね。
「で、なんでふたりでこもってんの?」
まさか乳繰り合っているということはないだろう。
「ハヤトは、姐さんが歌詞をモノにするまでの過程が知りたいんだと」
で、流行りの歌を姐さんに何度も歌わせているらしい。
「ふ〜ん」
そういって天井を見上げた俺にカズキは言った。

「お前ももっと好きなもの書けばいいと思うけど。遠慮しているんだろ? 違うんじゃないかって」
もしかしたら変わるタイミングなのかも、とカズキは再びペンを執った。
なんか、今までと違うスゲーものが出てくるような気がした。
俺も負けてられない。
もっと上へ。


編集: 短編