第204期 #3

オイツキ

 昨日、わたしのママが死んだ。
 それに、パパも死んだ。

 ママは事故だった。でも、パパは自殺だった。


 ……いなくなっちゃった。

 わたしは泣いた。えんえんと、お顔が真っ赤になるまで。
 でも、一緒に住んでいたお婆ちゃんはそんなわたしを泣き止むまで慰めてくれた。
 一緒に泣いてくれたの。

 そうしてわたしにこう言ったの。

「お母さんとお父さんは、お月様になって見守ってくれるわ」
「お月さま……?お星さまじゃなくて?」
「そう、お星様よりも大きな大きなお月様よぉ。いつも一緒にいてくれるわ」
「そうなんだ、お月さまになっちゃったんだ……」

 お月様にいるんだね……決めた。

 私は、その日冒険に出ることにした。
「いってくるね、お婆ちゃん」

 眠ったおばあちゃんにいってきますの挨拶をする。
 夏は暑い、だから涼しいサンダルに白いワンピース姿で私は夜の街に出たの。



 むし暑い、電灯もないし、辺りには田んぼだけ。
 夜って、こんなに寂しかったんだ。

 やっぱりパパとママがいないと、寂しいな……

ゲコゲコ……

 カエルさんの歌が聞こえてくる。
 本当ならいつもわたしだって寝ている時間なのに、不思議だな。

 辺りは真っ暗で、ちょっと怖い。でも、空にはお月さま……パパとママがいるんだ。
 会えるかな、わたしが月にたどり着いたら、また会えるかな。

 でも、どうやってお月さまのところに行くんだろう。走ったら近づくかな?


 てくてく、歩いてみる。
 でもお月さまは近付かない。
 たったっ、走ってみる。
 それでもまだ足りない。


 わたしから逃げてるのかな。パパとママは照れ屋さんだから、会うのが恥ずかしいのかも?

 ペタペタとサンダルの音を響かせながら、一定のリズムで進んだ。
 すると、小さな商店街が見える。

「誰もいない……肉屋のおじさんも、本屋のお兄さんも寝てるのかな」
 昼間はたくさん人がいるのに、今は私だけ。
「もしかして、今起きてるのってわたしだけなのかな……」


 そんなことを考えつつも、空に浮く月を追いかけて私は歩いた。
 それでも追い付かない。


「うう、嫌われちゃったのかな。もうパパとママには会えないのかな……」
 いつの間にか、大きな橋に来ていた。
 私は、気を紛らわそうと、橋の上から川を見下ろした。


「わあっ……!」

 そこには、水面に映り込むお月さま。
 こんな所に居たんだね、パパ、ママ。





 ボチャン

 水しぶきが舞う。
 やっとおいつけたよ。また会えるね。



Copyright © 2019 柚根蛍 / 編集: 短編