第204期 #2
四畳半のぼろアパートの一室に
似つかわしくない机は
田宮にとって必要不可欠なもので
あった。
いつものように、その机に向かい椅子に座りつっぷすように
して、ノートに筆を走らせる
それは物語とは言えない支離滅裂な文章
だが、田宮は、書かずにはいられなかった。
書かなければなにもない自分になってしまう気がして、恐ろしくて
震えながら怯えながら
ただひたすら、筆をはしらせた
物語とは言えないような言葉の羅列が
増えて行く、
その言葉は、田宮の叫びや愚痴を
表しているだけの
凡庸な、まったくつまらないものに変わっていった
死にたい、つらい、苦しい、変わりたい
孤独、一人、
消えたい、金、女、
才能、幸せ、成功
書きながら泣きながら、
嗚咽を吐きながら
平静を保とうするさまは
まったくもって普通ではなく
いつか田宮が望んでいた、
才気あふれる異常者のようだった