第200期 #8
久しぶりに友人の部屋に入った。膨大な参考資料とモノが所狭しと置かれたその部屋は、あの頃と何も変わってなかった。
初めて出会ったのは高校生の時だった。ずっとゲーム雑誌を読んでいたから、勝手にすっげーゲームがうまいんだと思ってた。
当時流行っていたRPGでどうしてもたどり着けないところがあった。それをアイツに聞いたのが、初めての会話だった。
手っ取り早く攻略してもらおうと思って、自宅でやってもらったら、滅茶苦茶下手だったのに驚いた。でも、コマンドとか正確に覚えてて、いろいろ教えてもらった。いわば、ちょっとしたナビだ。
大学生になっても一緒だった。夏休みとか一緒に貫徹して攻略したゲームは数知れず。
あっちは頭脳。こっちは筋肉?
隠しダンジョンとかそういうのもよく知っていて、一緒にいるとウザいと思うときもあった。なんか、こっちが操作されているような気になっていた。
だから、就活とか卒論とかを理由にどんどん会わなくなった。自分の思うようにゲームがしたいと思ったんだ。
気付いたら、全然会わなくなっていた。大学を卒業したら連絡先さえも分からなくなっていた。
ある日、本屋に入ったらアイツが読んでたゲーム雑誌があって、まだあるんだなって思った。
なんとなく懐かしくて手に取って開いたら、本当に小さな記事だったんだけどアイツの名前を見つけた。本当にアイツかどうかはわかんないけど、間違いないって確信してた。
そういえば、ゲームを作る側になりたいと言っていたような気がする。
なんだか悔しい気持ちになった。あっちは自分のやりたいことを着々と進めていて、自分はどうなんだろうって。
アイツと会わなくなって、何をしていたんだろうって。
悲しい気持ちと悔しい気持ちが込み上げてきて、雑誌を手にしてレジに向かった。
自宅から電話があった。アイツの葬式があると言われた。
一度、自分でゲームをしたいと思わないのか? と聞いたことがある。不器用だからうまくコントローラーが操作できなくてって困ったような顔をしていた。だから、コマンドを早く正確に打てるのが羨ましいって言っていた。
久しぶりにアイツの部屋に入った。膨大な参考資料とモノが所狭しと置かれたその部屋は、あの頃と何も変わってなかった。
いつかは自分もゲームを作りたいんだ。でも、考えることはできるけど形にするのはどうもできなくて。だから一緒に……。
今からでも、追いつけるだろうか?