第200期 #13

スキップ、スキップ

 スキップの仕方を教えている。
 ほら、影は軽々と手本を真似して跳び始め、肝心のおまえはよろめくばかり。
 ほら、影はあちらからもこちらからも集って跳ね始め、肝心のおまえは怖がって目を塞いでひとり蹲るばかり。
 ほら、影は上から幾重にも次から次へとかぶさっていき、肝心のおまえの姿はその下で覆い尽くされ見えなくなってしまう。
 やがて、積み重なった影の隙間から、小さな細い光が漏れ出てくる。生まれたての光はまだなんにも知らず、けれども、ただそこに在るだけで強い力をもちうるもの。未熟な光はなんらの意図もなく、無邪気にその明るさで、積み重なった黒い影を溶かしてしまう。影の断末摩の叫びもその苦しげな揺らめきも、幼い光にはまだその意味も痛みもわからない。光はただそこに在るだけ。そして、周囲を照らすだけ。
 かつては重たくて分厚い影だったものが、鋭い光に照らされ、どろどろと流れ落ち気化してその場から消えてしまうと、その下から、おまえだったものの塊が現れる。光はやはりなんらの意図もなく、ただそこに在って、おまえだったものに自身の光を当然のように照射する。おまえだったものは影だったものと同じように、表面から徐々に溶解してぐずぐずと崩れ落ちていってしまう。おまえだったものはすでにもう塊ですらなく、個々に分かたれてしまった断片になりはててしまっている。
 けれども、断片は、軽い。そう、おまえたちは、軽さを取り戻したのだ。
 光が跳ねる動作を繰り返して、意図せずスキップの仕方を教えている。ほら、何にもつながらずに影さえも従えることがなくなり全く意味のない欠片となったおまえたちは、てんでばらばらに、全くもって好き勝手に、もう何を手本として真似することなく、ただもう思うとおりに。
 スキップ、スキップ。



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