第200期 #12

急いでる

 6931。
 二階堂はスマホにpinコードを素早く打ち込む。

「話聞いてる?」
「ああ」

 暖冬だった。薄い長袖で、ポケットにハーフのハンカチが入っている。

「ほんとうに?」
「本当だよ」

 二階堂は Chromeを立ち上げて、何かしらのブックマークページを開く。

「プログラミングがしたいんだ」
「わかるよ」
「意味わかってる?」
「ああ」

 二階堂はChromeを閉じた。そこで、じっと考えたあと再びChromeを開く。

「なぁ、プログラミングがしたいんだよ」
 彼はしきりに汗をぬぐう。
「冬だけど」二階堂はtwitterを平行で立ち上げる。「暖かいな」

 彼は長袖を捲る。両腕の。

「なあ」
 Twitter を閉じる。
「えっと?」
「急いでるんだ」



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