第20期 #5

北風と太陽

 外はあいにくの雨模様で燦々と輝く太陽を今日はお目にかかることが出来なかったのですが、太陽様はきっと冬仕様の生活を送っていたのであると思われます。夏に早起きで朝の4時ともなると外は遠くまで見渡せるくらい明るくなっていて、夜の6時くらいまでは子供が外で遊んで大丈夫といったように朝から晩まで長い時間お仕事をなさっていました。しかし、冬ともなると太陽様は寝ぼすけになられて我々人間の起きる時刻と同じくらいに目を覚まされ、夕方の5時ともなると就寝なされるようになるのです。

 それは北風様のせいなのです。北風様は太陽様とは仲がよろしくないようで、太陽様のよくお働きになる夏などには姿をなかなか見せません。太陽様は我々人間達が外で活動なさるのをお空から見るのがとてもお好きなのです。それに対して、北風様は秋から冬にかけて積極的にお姿を見せます。北風様がお姿をお見せになる頃にはあいにく低気圧様が勢力を伸ばされますので、北風様に乗って一緒にやってくるのです。太陽様や我々人間は寒いのが苦手なので、北風様の事があまり好きではありません。ですから、太陽様は早くお仕事を切り上げてしまうのです。

 我々人間からすれば、北風様がお姿をお見せになられる事はあまり好ましい事ではありませんので部屋に篭りがちになってしまいます。でも、北風様は太陽様と同じくらい我々人間の事が大好きなのです。太陽様の事が大好きなのです。我が子のように思っているのです。それが悲しい事に、寒いと言う理由で太陽様は仕事を早めに切り上げてしまうし、人間はあまり外で活動しないのです。北風様は残念に思います。風という職業は地球という会社の中では役割がとても重要なので、なかなか日本に顔を出す事が出来ないのです。お仕事の都合でやっと顔を見せることが出来たのに、太陽様や人間達の姿を長い間見ることが出来ないのです。そうやって毎年秋から冬にかけて北風様は吹き続けるのです。


Copyright © 2004 永瀬 真史 / 編集: 短編