第20期 #12
何の変哲も無い部屋。
椅子。机。ランプ。窓。
ありふれた家具。そして、ありふれた男。これらが部屋をなす。
その男を破壊する為に、任務が始まる。
変わった男。その奇怪さゆえに世間からは狂人扱いだ。精神鑑定は受けていないが多分正気だと思われる。
性格に深刻な問題はあるが。
奇怪さ。それは、その熱意。部屋の外に立つと中から聞こえてくる笑い声。
何かが起こっている。頭の中で。
ありふれた男の名前は山田太郎。名前自体はありふれていない。
その部屋の中で、椅子に座り、机に向かっている。何もしていない。
変わった男の任務、それは命令達成。
命令は山田太郎の破壊。ただし殺すな。
夜と共に訪れる影。
「ホ−ッ」
変わった男はサインの鳴き声を上げた。梟の鳴き声。
サインの鳴き声と共に影は動き出す。影の正体は自明。
変わった男は窓ガラスにガムテープを窓一面に貼っている。それを拳で一撃。
音もなく窓ガラスが割れる。ドラマで観たのだろう。
狂気が始まる。
隣にいた憐れな男はいささか間抜けた質問をしたために、
その場で射殺されてしまった。しかしそのおかげで俺にヒントを残してくれたとも言える。
その死を無駄にしてはならなかった。
その質問。
「C子さんとD室は存在するのかっ!」
その質問に対し謎の仮面の人物は軽く笑って男をもっていた拳銃で撃った。
轟音と共に弾は男のこめかみに命中。即死だったろう。
たとえどれほど命が尊いものであるにしても失われる時は実にはかない。
その謎の人物。ぶらぶらした手。拳銃を持っている。
細めの体型。かなり背は低い、か。
そして顔。すぐ目にとまる仮面。一昔前、仮面ライダーと呼ばれた代物ではなかったか。
気まぐれな死。とても恐ろしい。自分にいつ降りかかってくるか分からない、
というかいつ降りかかってきてもおかしくはない。この状況では。
つまり恐ろしい状況だったと言う事だ。
ヒント。女の発言。
拳銃を発砲したすぐ後にその人物、こうつぶやいた。女と分かった理由も発言にあり。
「私がC子さんよ。」
無論、男は死んだ後だったのでその答えには意味がないとも考えられる。少なくとも自分以外には!
その夜、山田の家は5人の狂人に押し入られたと週刊誌には書いてある。
その見出し。「なんたる不運!はちゃめちゃナイト!」
このような週刊誌が存在する以上、全ては非現実だ。
その夜、山田は家にいなかったらしい。普段から何も考えない男だったし、何も考えずに外出したのだろう。