第20期 #10

ケアレス

僕は・・・、いつも何時も・・・つきに見放されていた。
 小さい頃から、ケアレスミスの連続。
 ―――そんな・・・―――
 大事な最後に、失敗する。詰めが甘いせいだろうか。
 テスト。 人間関系。 予約録画に恋愛・・・。
 最後の最後で・・・何時も嫌な結果を見てきた。
 ―――不公平だ―――
 何度そう思ったか・・・、数え切れない。
 運命の女神・・・もし居たらそいつをのろってやる。
 そこまで思った。
 これまでは。
 ―――運命の女神・・・――― 
 そんな物は居ないだろう。僕は偶然に引き合わせられたんだ、きっと。
 彼女と目が合ったとき、そう感じた。
 そして、それは当っていた。
 幸せな日々が始まった。

 「おい、西川?」
 「何?」
 あの出会いから半年ほどたっていた。
 「もしかしてさー、お前彼女とか出来た?」
 「何で・・・そんなの居るわけ無いよ。」
 「・・・」
 武田は無言に疑いの目を強め、そうはしながらも戻っていった。
 ―――勘のいい人だ―――
 男の勘というものは在るのだろうか。少なくとも、
 ―――武田は気付いた―――
 僕はそう思った。
 ―――けど・・・―――
 僕も馬鹿じゃない。
 成績だって何時も二三番手だ。
 ―――一番にはなれないけど・・・―――
 嫌な事を思い出した。
 ・・・忘れよう。
 今思えば武田は何時も僕のそばに居た。
 邪魔だった。
 僕の予定が狂うとき、
 ―――アイツが・・・―――
 あいつの影が見え隠れしていた。

 ―――又、・・・壊される―――
 ―――武田に―――
 僕は本気でそう思った。

 計画は完璧だった。
 誰にもばれなかった。
 ―――もっと早くやれば良かった―――
 そうとさえ思った。
 たった一人の男の死。誰が困るものだろうか、誰が悲しむだろうか。
 誰も、何も、変わらない。
 そう・・・全てが、
 ―――これで良かった―――
 僕の幸せは持続する。
 僕の思いでは、一生だ。
 綺麗だ、彼女は綺麗だ。
 彼女にだけは悪いけど・・・。
 ―――もう少し暖かい日が良かったか、な―――
 思えば最後の最後まで・・・、詰めが甘かった。
 揺れている、風に。
 まだそれに意思があるかのように、あがなうかの様に。
 僕は首をつっている、公園の中。
 僕は幸せだった。
 ―――もう壊されない―――
 僕の夢は。
 僕は静かに。
 僕は、少しだけ悲しかった。
 不公平な日々は、・・・もう終わった。


Copyright © 2004 優下月 / 編集: 短編