第19期 #8

ハーフなライフ

 高校生の彼は何もかにもが全て中途半端であった。
 運動が上手いわけでもないが、成績が最低と言うほど全然駄目と言うわけでもなかった。勉強が得意なわけでもなかったが、着いていけないと言うほど苦手でもなかった。彼女がいると言うほどでもないが、格好良くも無く、格好悪くもなかった。趣味は沢山あるのだが、沢山あるが故に深く知っている訳ではない。
その中途半端と言ったらパーフェクトと言うほど中途半端と言いたい所だが、そんな彼にも一つだけ得意な事があった。それは歴史であった。
しかし、いくら歴史が得意でも彼は工業高校の生徒であり中途半端と言うことには変わりは無かったのだが、本にはそれを逆手に取り一大決心をしたのである。
「俺は歴史のテストで100点満点を取ってやる!」
工業高校だからこそ、歴史で100点満点を取ることは出来ると彼は考えたのである。そしてこの100点満点を取ってせめて一つでも中途半端から逃れようと、彼は誓ったのだ。
それから彼は、毎日放課後残ってまで来る日も来る日も必至に歴史の勉強をしたのであった。

運命のテストの日。彼は意気揚々とテストに挑み、今日まで勉強してきた全ての力を発揮した。全ての解答書き込み、楽勝にテストは終わったのだ。
数日後、テストの結果が彼のもとに返ってきた。クラスの人も、彼の数日の頑張りを知っていた。担任の先生も、そして自分自身も、彼を知る全ての人々が、100点満点を取っているに違いないと確信していた。
次々と答案が返されて行った。歴史の先生はなぜか今日に限って趣向を凝らすと言って、点数の高い方から順にテストを返すと宣言した。
「それでは、いきなりではあるが本日の最高得点を発表する!100点!出席番号11番!」
出席番号11番、もちろん彼の番号だ。クラス内は一気に歓声が響き渡り、解答用紙を取りに行く彼にはみんなのコールが鳴り響いた。彼は先生から解答用紙を受け取ると、すぐさま皆に両手で解答用紙を掲げ上る。気分はボクシングの世界チャンピヨンだった。
しかし、それを見たクラスの人たちは一人、また一人、顔が引きつっていく。
「何かがおかしい。」
異変に気付いた彼はすぐさま解答用紙を確認した。そして、そこには驚愕の事実が隠されていたのだ。
この問題は、先生の問題ミスで、1問多く出題されていたため、104点満点のテストだったのだ。
彼は最後まで中途半端な運命から逃れられなかったのである。


Copyright © 2004 ジョン億三郎 / 編集: 短編