第188期 #3

何年何か月。

時間が過ぎるのなんて、あっという間だ。
永遠とパソコンと向かい合い、眠くなったら布団に潜り、朝日がカーテンから漏れ出した頃合いに目を覚まし、リビングの食卓に用意された冷めた食事を口に運ぶ。
毎日の僕の生活は、時間というものをあまり認識せずに行われている。
もう僕のことを諦めた母さんは、それを「ひきこもり」と呼んだ。
僕は否定も肯定もしない。僕は自分を「時間の浪費者」と呼んでいるからだ。毎日部屋にこもってばかりなのは認めるけども、たまになら、夜散歩に出かけることもあるし、どうしても自分が引きこもりというような分類にあると思えない。
もう随分時計というものは見ないけれど、それでも時間が過ぎているのは嫌でもわかる。
最近では、ちょっと前まではうちの前の道路を、本を読みながら歩いていた文学少女は、しばらく見ないうちにセーラー服からスカートの短くなった見知らぬ制服になっていた。スマホを買ってもらったのか、その手には本ではなくスマホが握られていた。
雪が降っていたと思えば、窓を見れば今度は桜が風に舞っていたり、朝がきたと思ったら既に夕焼けが沈みそうになっていたり。
こないだまで元気にしていた祖父は、知らないうちに病気になってなくなっていたり。
ふと、顎をさすったら、自分に少し髭が生えていたり。
ネットには、つい最近まで引っ張りだこだったタレントが不倫やわいせつが露見され、どんどんいなくなり、そして代わりのタレントが人気を出し始める。世間の時の移り変わりは一番早い。

僕が今何歳なのか、そんなことすら忘れて、眠っては起きてを繰り返す。まるで、獣のようだと思った。いや、それすらも獣に失礼だ。生きることに必死な彼らとも僕は違う。それならなんと表現するのだ、今の寿命の長い僕に有り余った時間を浪費する僕は。

いや、結論を出すのは、この長い生涯でめいいっぱい考えてからでいいんだ。いくらだって時間はある。

目をつぶる。

とりあえず今日はシャットダウンだ。



Copyright © 2018 さばかん。 / 編集: 短編