第187期 #4

カンジャンケジャン

Re:
いつものマックに13時に集合。

...

人が多い。平日なのに。春だからか。くそ。


          ひとおおい。別のとこで。



...

結局、ホテル近くのコンビニにお互いの車を停めて、カノジョの車に乗り換えた。

...

「人、多かったね」
「ん?」
「マック」
「あー、春だからだろ」

そか、と言ってカノジョは背を向ける。
肩にあるほくろが目に入る。
ほくろ?
そこでカノジョが髪を切ったことに気づく。
怒るかな。まぁ、いいや。
切りたての髪を崩さないように、後ろから肩を抱いて、ついでに胸を揉んで、目を閉じる。

「寝るときは離れてー」
「はーい」

反対を向き、もう一度、目を閉じる。

(あ、喉かわいてたんだった)
(まぁ、めんどくさいから、いいや)

...

「今日はもう帰るね」
「早いね」
「うん、カンジャンケジャン食べるの」
「カンジャン?」
「カンジャンケジャン」

韓国の食べ物で、しょっぱくて、色が鮮やかで、寄生虫がいるかもしれない。
要は、カニの塩漬けだ。

「食べてみたくない?」
「うーん、カニは食べるの面倒で」
「つまんない男ー」

よく切り揃えられた前髪の下にある目は、笑っていない。

「私、剥いてあげるよ?いつでも」

答えられない僕に、じゃんねー、とわざと素っ気なく車に乗り込むカノジョ。
コンビニで立ち読みしようも、カンジャンケジャンにかぶりつくカノジョの姿が頭から離れない。

減り続けるカニの塩漬けと、上下する揃った前髪。

(髪切るか、春だし)

もうすぐ18時なのに、空はまだ明るい。



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