第182期 #2

豊罪

テレビの液晶画面に映し出された、凄惨な光景を見た。それは、ある外国の、とある地域での、虐殺に等しい戦争の光景。
眩しい日光に照らされて、美味しい米を頬張りながら見るには、いささか不釣りあいな映像だ。
まだ起ききっていない思考のなか、他人事のように、(実際そうだが、そう思うことはあまりよろしくないに違いない)
「大変だなぁ…」
呟いて、また米を頬張る。もくもく、小さく頬張って飲み込む。
あぁ、人が叫んでいる。泣いている。わめき散らしている。
なんて、酷い。
でも、もっと酷いのは、私ではないか。
こんな凄惨な光景を見て、ご飯を食べている。ある、一種のコメディと化してでしか、この映像を見ていない。
いや、私だけが悪いのではない。この環境のせいもある。

豊かだった、わが国は。あまりにも。

朝が来ることは当たり前で、夜になれば安心して床につくことができ、毎日三食栄養の偏らない食事がとれる。あろうことか現時点では自殺率さえ上昇し、生への執着すらあまり強くない。
生きたい、そう願って死んでいった戦場の地の今は屍となった彼ら達に、申し訳ない気持ちになったっていいぐらいだ。
しかし、だ。
ご飯は美味しいままだし、大した感情は生まれてこない。

酷い。酷すぎる。
自分に、そう戒めてやる。しかし、それでも心の奥底では変われていないのだった。
私はどこまでも酷たらしい、豊かに恵まれた、自分以外の恵まれない彼らに、何の心も持ち合わせてなどいなかった。

あぁ、愚かだ。

明るく邪気のない日光に照らされ、栄養の取れた食事をひたすらと噛み続け、味わい、私は今日も『豊か』を謳歌するのだ。
今日も何処かで悲惨な殺戮が行われていても。



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