第182期 #10

まぶたが想い

まぶたが重い。

私の仕事は警備員だ。
モニターで、この建物の玄関を監視している。人は滅多に来ない。二時間に一人くればいい方だ。
人は滅多に来ないが、上司がよく来る。あの人もまた暇なのだろう。配置中の同僚や、モニター室にいる私などに声をかけてはしばらく雑談をしてまたどっかへ行く。たまにオフィスで書類関係の仕事をしているらしいが詳しくは知らない。

上司は今年で十年目になる大ベテランだ。この業界では二年もやってればベテラン扱いされる。だがそんな彼も来月には退職する。その彼のポジションには私がはいる。私も恐らく暇を見つけては、同僚や後輩のところへ行き雑弾をするのだろう。

つまらない仕事だ。

なぜこんな仕事をこんなにも続けてしまったのだろう。同期や先輩は殆どいなくなった。誰かが辞めるたびに私はいつまで続けるのだろうと思う。辞めたいとも思うが、他にしたい仕事があるわけでもない。

学生の頃は楽しかった。勉強は嫌いだが部活はすごい頑張った。友達とよく遊んだ。彼女ができたりもしたが、失恋もした。どれもいい思い出だと思う。
そんな私も学生の頃は将来どんな仕事に就くのかワクワクしていた。あの頃の努力や苦労がこの仕事のためだと思うと虚しく感じる。

そうこう考えていたらモニタ越しに人が現れた。
特に不審な感じはしない、ただの来客者だ。
突然の来客者に目がちょっと覚めた気もする。

だがやはり、まぶたが重い。



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