第18期 #22

象と砂糖

 時代の流れは確実に二大政党政治へ。


「やあこんにちはエレファン党の議員の方、今日もお使いかい? 偉いねえ」
 スマイル商店街へどすんどすんと足音を響かせてエレファン党議員がやって来る。
「そうなんです、今日もお使いです」
「いつものようにじゃがいもとりんごだね」
「そうです。お金はこの長くて丈夫で便利な鼻に提げた買い物カゴの中に入っていますから、品物をお金と交換して、カゴの中に入れて下さいね」
「ああ、おじさんだあ、エレファン党のおじさんだあ」
「駄目だよお前たち、エレファン党のおじさんは今お仕事してらっしゃるんだから」
「いや良いのですよ八百屋のご主人。未来ある子ども達との触れ合いも私の大切な仕事ですからね。さあ子ども達、私の背中に乗りなさい。私の広い背中に乗りなさい」
「わあいエレファン党のおじさんの背中だあ」
「毎度有り難う御座いましたあ、バランスを崩さないように気をつけて帰って下さいねえ」
「さあ子ども達、丈夫で広い私の背中で存分に遊びなさい。あ、駄目だよワシントン君、牙に触ったら。怒られちゃうからね。さあ子ども達、何処へ行きたいかなあ。何処で遊びたいかなあ。あ、駄目だよワシントン君、牙は駄目だよ? 怒られちゃうからね、ああっ」
 ぐあらあがあん。
「ああこの音は、またバランスを崩して倒れてしまったんだねえエレファン党の方。ふふふ、力持ちだけれど、全く仕方が無いねえ」
 車二台を押し潰して倒れたエレファン党議員。街の人達が十人がかりで助け起こしている中、スマイル商店街の反対側にある集会場には続々と人が集まり始めていた。
 集会場の周りに貼られたポスターの数々には山盛りの白砂糖が大写しになっている。
 壇上にはマイクがずらりと並び、その中心にはピラミッド状に積まれた角砂糖が六個。
 サ党の演説集会である。
 人々はうっとりと壇上を眺めている。
「我々の集会にお集まり頂いて誠に有り難う御座います。それにしても良い天気ですね」
「あまぁい」
「景気は、まあなかなか良くなりませんなあ。どうすれば良いかはちょっと解りません。が、まあとにかく頑張ってみますよ。気合いだけは充分です」
「あまぁい」
「とにかく次の選挙はサ党へお願いしますね。清き一票を、お願いしますね」
「あまぁい」
 人々はうっとりと壇上を眺めている。


 時代の流れは確実に二大政党政治へ。
 エレファン党とサ党。そのどちらの主張にも、私は半分だけ賛成です。



Copyright © 2004 るるるぶ☆どっぐちゃん / 編集: 短編