第18期 #17
女がいた。
歳は二十五歳。
髪は黒く長く、背は高い。
小学校の時は泣き虫で、二つの違いの弟にいじめられては母親のエプロンの影でめそめそ泣いていた。学校では飼育係をして、ウサギにうさ子と名付けた。
中学に入る頃、急に背が伸びて女子の中で二番目に背が高くなった。バレー部に誘われたが、美術部に入り絵を書いた。絵は大して上手くならなかった。
高校では真面目な優等生で、生徒会の副会長を務めた。三年の時にクラスメイトに告白されたが、今は受験のことだけ考えたいと断った。
高校を卒業した後、都会の大学に進学し家を出た。
大学ではバトミントンのサークルに入り二年先輩の男と付き合って、初めてセックスをした。
その男が大学を出た後は、卒業するまで誰とも付き合わなかった。
大学を卒業すると、事務の仕事に付いた。
いつの間にか十二歳年上の上司と不倫の関係になった。
一年ほど関係が続いた後、上司が本社に栄転になり自然と関係は無くなった。
その後、何人か男が言い寄ってきはしたが、誰とも深く付き合うことはなかった。
二十五歳の誕生日を迎えると、突然仕事を辞めて故郷に帰った。
家では母親の手伝いをし、よく笑っていた。
彼女はまるで仕合せなように見えた。
薦められるがままにいくつか見合いをしたが、どれもまとまることはなかった。
そして、ある日曜の夜。彼女は小学校の屋上に忍び込むと、そこから飛び降りた。
死体を発見したのは朝早く登校して来た飼育係の少女だった。
そんな女がいた。
名前は亜希子。
僕の姉。