第176期 #3

この見えないはヒルサガリ

ヒルサガリ。私は町に出た。静まり返った町に出た。いらっしゃい世界、そしてさようなら孤独を約束して。寂しい人形達が目を光らせて私を見つめる。見つめ返すこの目は怖い?人形は怯えたようにただ草臥れている。気付くと家畜小屋のような臭いが次第に迫ってきていた。トナカイよろしく鼻のあたりを赤く染めた陽気な牧神達が歌いながらフラフラと踊っている。
「...う...あ...う」
もういちど気付くと、別の発見。ヒルサガリは私の脳が忙しい。次から次へと倒錯するアカルサ。けれどそれは明るさではない。私の脳を騙すようなアカルサ。
「もう一度昼下がりの明るさを見たい...」
儚い少女の夢はいつまでも残酷に、ヒルサガリと呼ばれた見えない昼の明るさの中を歩き続ける。



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