第174期 #4
風のそれとは従兄弟らしい。
風貌は似ているが、どこか卑屈だ。
間違われて代わりに「風」とサインしたこともある。
コンビニでアルバイトしていると、驚かれることがあるが、いや俺は雨なんで風じゃないんで、と言い訳する。どうしてただ普通に生活しているだけで言い訳しないといけないのか。慣れっこになった店長は低く笑っている。こんなコンビニつぶれてしまえばいいのに。
雨に乗って出勤する。
彼がやってくると同時に雨が降ってくるので、おおむね嫌われる。所によって歓迎されることもある。日照りが続いていると神のように扱われる。教祖様と言われたこともある。
悪い気はしない。
俺が教祖か、教祖である俺が一声かければ、神の儀式としてSEXができるのかな。
シンプルな疑問を感じて試したことがある。一度、教祖様という女が自宅にやってきた。どうしても雨を降らせてほしいのです。なんでもします。なんなら現金も支払います。どうかどうかお願いします。女は必死だった。いや現金はいらんけど。けど?ちょっと中入ってくれる。はい。まあソファに座ってリラックスリラックス。はい。いや俺もねここんとこちょっと忙しいわけ。そうでしょうね。雨降らせるんもかなり労力がいるわけ。現金支払います。いや現金はいらんけど。けど?ちょっとこれに着替えてくれる?これですか、かみなりさんの衣装?そうかみなりさんの女もんの服やから。まさかかみなりさんにもらったんですか?いやドンキで買うたよ。着ればいいんですね?そうそうあっちで着替えてきて。わかりました教祖様。
SEXできた。
女は妄信していた。約束通り雨も降らしてやった。女は映画撮影クルーのひとりで、無茶なことを命じられ続けて、雨を降らせろと命じられたらしい。女もなかなか大変だ。
時々むなしくなる。
てるてる坊主ににらまれる。
戦闘はしたくないけれど、てるてる坊主からしたら商売敵ということになる。むこうもむこうで晴れることを条件にSEXしたりしているに違いない。力としては俺の方が強いのでまあ、ぼちぼちやってやるが、むこうが団体でこられるとかなわない。
遠足前の子どもは阿呆みたいにてるてる坊主を量産し、俺を困らせる。そういう時はこちらも考えがある。家族を呼べばいい。ここは降らさなあかんなというときには家族、親戚総動員して確実に降らせる。そうして教祖としての面目を保つ。
風のそれとは従兄弟らしいが、会ったことはない。