第174期 #3

骸骨兄弟

「僕と付き合ってください!」
そこの身長129cm、87kg、丸く剃った髪型に三角形メガネをしていた彼は、もてない天才だった。
「生理的に無理。」
今日は記念すべき、大学に通う女子全員に告白した日であり、全員に即答で振られる日であった。
「俺と付き合ってください!」
そして、身長128cm、45kg、栗あたまの彼は、もてない天才の弟であり、もう一人のもてない天才だった。
「死んでもなお、無理。」
同じ日に、弟は高校の全女子に告白し、即答で振られた。
まさに天才兄弟。
「弟よ、この世界を壊そうか。」
「そうだな。見た目で人を判断する、この世界が憎い。」
あれ以来、2人の天才は協力し合い、見た目は骸骨のようなバケモノを作った。
「女も男も、皆、消えちまえ!」
「それにしても、骸骨はいいな。」
「そうだな。格好いいし、見た目で差別しないし。」
弾丸はもちろん、核兵器を食らってもなんともなかった丈夫さ。
指の骨を伸ばしだけで、海底に突き通せる破壊力。
それはまさに無敵なバケモノ。
だが、世界制服を目前にした時、2人は決裂した。
「弟よ。今日もあれをやろう。」
「そうだな。最近は研究に専念していたから、してなかったな。」
2人は身長測定のために、作ったマシンに入った。
「測定を始めます。兄、129cm。弟、129.5cm。」
「なんだよ!? 弟のくせに、僕の身長を越えるなんで、生意気だ!」
「身長が負けたくらいで、そこまで怒るか?」
「僕が負けたって言ったな! 身長が負けても、頭脳は負けないから!」
「どう考えても、俺の方が頭いいでしょう。俺が居なければ、ガラスすら割れないくせに。」
「それを言えば、僕がいなければ、風に撃たれただけで骨が折れるくせに。」
「言ったな! これからは1人でやらせて貰おう。」
「それは僕のセリフだ!」
こうして、決裂した2人は新たなバケモノを作り、世界を荒らした。
気がついた頃には、世界に残された生命体は、この兄弟2人だった。
「なぁ。仲直りしよう。」
「そうだな。これ以上、争っても意味ないもんな。」
「それにしても、やり過ぎたな。」
「人類絶滅だな。」
「まぁ、これはこれでいいでしょう。」
「今度は、もっといい世界で生まれたらいいな。」
「宇宙人より格好いい自信はあるよ。」
「僕も。」
兄弟は微笑みながら一斉に、見た目からして危険な薬を飲み干した。



Copyright © 2017 李 天錫 / 編集: 短編