第172期 #11

ガンジー搦め

ガンジーのくせに生意気だぞ。ガキ大将は言う。たしかにそうかもしれない。ぼくもそう思うけれど、ガンジーはガンジーとして凛として目をつむる。ほらガンジーが瞑想始めた、危険だ、ガンジーの瞑想は現実世界とリンクし、摩訶不思議な現象が手に取るように、そこにほら。そうなったら無敵、ガンジーは無敵状態になって走り回る。体当たりすればすなわちみんな吹き飛ばされていくんだから。ダンプカーみたいにガンジー、暴れ回る。ガンジーのくせに、今まさにこの言葉が通用するんじゃないかとぼくは思うが、ガキ大将は吹き飛ばされていない。地球の裏側にいるのだろう。ガンジーはぼんやりと、なにも読み取れない表情。ぼくはガンジーに向かって、フォークを投げる大魔神佐々木だ。守護神でなく大魔神。フォークの切れは、ティーンエイジャーの小便の切れのごとく、鋭い。ガンジーは空振り三振試合終了。ヒーローインタビューは大魔神。俺?いやそんなたいしたことしてないから、俺、特に聞かれることもないし、だからガンジーに聞いてやって。教典のこととか、思想のこととか、色々あるじゃない。世界をかえるかもしれないガンジーにインタビューすればいいじゃない。俺はしがない大魔神佐々木所詮、大リーガー。ガンジーにはかないません。ガンジーの飲みほぼしたコークをもらうだけの人生。年俸は10億、その半分を埋めておく。銀行なんて信用できん。埋めておけば芽が出て、伸びる。やがて花咲き、実をつける。金のなる木が出来上がる。それを売ればガンジーは、細い目をした乙女となりて、後ろ髪引かれる思いで駆ける。どこへ?ガンジー子はどこへ向かっているの?あたしはね、佐々木。佐々木じゃないです、もう俺は佐々木ではないのです。では誰ですか?ある概念です、佐々木と言う名の概念がしゃべっていて、そのうち黙るでしょう。そのころガンジー、あなたはその丸い眼鏡の奥にある、目は笑っていないから、油断できない。油断したら噛み付かれる。ガンジー、佐々木、いきます。どこに?ガンジーのエクスタシーへと。勝手にどうぞ。



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