第170期 #2
吐いて、吐いて、吐いて。まず吐ききることからはじめよう。自分の中にある空気を、体に満ちている空気をすべて吐ききるイメージで吐いてみる。吐いてみる。吐いてみる。徹底的に吐いてみる。そう、なんなら魂も吐き出す。勢いをつければ吐き出せる。頭にある限界を超えるんだ。人間やればなんでもできるんだから。そう、そう、そう、いいねえ、出てるよ、いっぱい出てるよ魂、空に浮かんで踊ってやがる。何楽しんでんだてめえ。こっちは遊びじゃねえんだ。命とチャーシューメン1杯かけてやってるんだ、へらへらすんない。ほら、今、お前は空っぽ。なんにもない、空洞です、空っぽの入れ物がぼうっと立っててこっちを見てやがるよ。いっちょまえにこっちを見てやがる。意思なんてないよ、空っぽなんだから。大丈夫、そんな不安な目をしなくてもいい。あとで戻ってくる、戻ってきたら適当に餌と水をやって、散歩に連れて行ってやること。で、ほら、入れ物よ、労働の時間だ。さっき言っただろ、入れ物に意志はない。ただ従うだけ、この黒スーツに従っていればいい。え、戻ってきた。魂が?残念、閉じ込めてあるよ、この先祖代々伝わる壷に閉じ込めたんだ。お前はこの中にいるんだよ、戻ってきたと思ってるもんは、狐。気づいてないと思うから言うけど、お前、コンコン言ってるからね。たまたま俺が狐の言葉をわかるから良かったけど、母親だったら卒倒してるかもしれんぜ。いい?狐なんだからそんな獣の意志に従わずにね、黒スーツに従ってもらわないと。獣と黒スーツのどっちが偉い?どっちがiPhone持ってる?あんまりわがまま言ってっと、壷の中の彼女が悲しむよ。さあ、労働しよう、服を脱いで。