第170期 #10

裸族を求めて

衣食住の「衣」を捨てた種族がいると知り、俺達はとあるジャングルへと向かった。

「どういうこと……?」
用を足して帰ってきたら、休憩をしていたはずのチームがいなくなっていて。確かこっちの方角に向かう予定だったと思い、足早にチームを追いかけた。
それから何日経っただろう。まさかジャングルで遭難するとは思ってもみなかった。いや、そもそもおいて行かれるとは思ってもみなかった。みんな、本当は俺のこと嫌いだった、というか、殺したいほど憎んでいたのかもしれない。殺したいほど憎まれるようなことはした記憶がないが、人はどこで誰の恨みを買っているかなんてわからない。だから俺も知らないうちに……。
そこまで考えて、俺はその思考を止める。ひとりでいるとロクなことは考えない。おまけに、今朝持っていた食料も水も底をついてしまい、腹ペコだ。頭を使うことさえも、得策ではない。
しかし、目下の問題は着替えだ。腹が空いているのに風呂に入って着替えがしたい欲求の方が今は強い。衣食住と「衣」が伊達にトップではないと痛感する。そんな「衣」を捨ててしまった種族とは一体……、と過る。
歩く気力もなくなり、木に寄りかかって木々の隙間から辛うじて見える空を眺めた。ウトウトし始めた俺の耳に人の声が聞こえた。複数の男性と思われる声の方を軽く見る。彼らは俺を見て指さしていた。距離があったからか、意識が遠退き始めていたからか、彼らの言っていることは理解ができなかった。

気が付くと俺は素っ裸にされて、藁らしきものの上にいた。
驚きはしたが、ビックリして飛び起き、声をあげられるほど気力はなく、ゆっくり体を起こして辺りを見回した。
「えっと……」
一瞬目のやり場に困った。女性が全裸でウロウロしているとは思わなかったのだ。彼らが俺が探していた種族なのだろう。よく見ると、妊婦らしき女性はお腹にさらしのようなものを巻いていた。あれは、お腹を冷やさないようにするためのものなのだろう。通常裸でいるのに、あれは気にならないのだろうか?
男性にあやされている赤子もいる。赤子はお包みに包まれている。これから裸で生活をするのだが、いつまで布で包まれているのだろうか?

やはり、保温が必要なときは裸族でも「衣」を使用するのだ、と考え至ったのは、ここにきて1ヵ月過ぎた頃だ。俺はこの1ヵ月で上半身は裸になった。しかし、下半身は慣れない環境を隠すため、唯一布を纏っている。



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