第17期 #6

学校を卒業した鶴留繁は地方都市の市立小学
校に着任した。五年生を担当。初等教育の理
想に燃える。が児童に人気がない。同時に、
繁は若ハゲという悩みを抱えている。卒業を
機にかつらをあつらえていた。二学期、いじ
めの噂を耳にする。活発な伸男に元気がない。
体育の時間、悲鳴が聞こえた。授業を見学の
伸男だった。伸男の二の腕にスズメバチがと
まっている。繁は動くなと指示をした。繁も
恐いが、意を決して隣に座った。気をそらそ
うと話題を投げた。今日のカレーは美味しか
ったなぁと繁が言うと伸男は涙をこぼす。繁
が聞くと、近ごろ仲間はずれにされると言う。
原因は先生の頭だと言った。繁はドキッとし
た。先生は汗をかいても、髪の毛が濡れない
のはかつらだから、とリーダー格の剛司と取
り巻きが言うので、伸男だけが自毛だと反論
したところ、仲間はずれにされたと言う。繁
は顔から火の出る思い。かつらを隠蔽する術
を繁は蜂をにらみながら考えた。伸男は繁の
顔が紅潮し目が血走るの見て、本当にかつら
なのかもしれないと思った。もしかつらなら、
いじめも終わると考えた。そして、早く蜂と
先生のふたつの重圧から逃れたかった。一方、
冷静さを欠いた繁はしどろもどろに言葉を吐
く。先生がいつでも味方だ。自分の意見を腹
にためるな。嘘はついちゃいかん。人をだま
すよりだまされろ。夕日に向かって走れ。そ
のとき伸男は目を耀かせてうなづいて、二の
腕に蜂を載せたままそおっと立ちあがった。
クラスメートのところへ向かっていった。み
んなは蜂を載せた伸男を遠巻きに眺めた。取
り残された繁は嫌な予感がした。伸男が「先
生はかつらだぁ!」と叫ぶと同時に、繁は半
べそで笛を鳴らした。どよめきのなか蜂は秋
の空に消えて行った。うなだれる繁。次の日
から繁はかつらをはずした。あだ名はツルピ
カ先生。伸男に笑顔が戻った。もう隠すもの
もなく、教育に体当たりで臨む繁であった。



Copyright © 2003 江口庸 / 編集: 短編