第167期 #8
特に山登りが好きではないのに、ある日の撮影の合間に実家の裏に山がある話をしたら次の企画モノが山ガールになってしまった。ロケーションはメジャーじゃないのがいいでしょってことで中央アルプスの某山が選ばれた。
衣装は最寄り駅のアウトドアショップでサイズに合うものを一そろい買ってもらった。どうせ今日しか履かないしいいかとも思うのだけど、登山靴もちゃんと店員さんにサイズを見てもらって買った。「この黄色の紐が可愛いんですよー」と笑いかけてくる彼女とは何となく目が合わせられなかった。
入山すると元登山部の血が騒ぐのか、さっさと登っていく男優の後ろで、私はぜえぜえ喘ぎながら必死についていく。やっぱりちゃんと登山靴選んでおいて正解だった。
監督に「じゃあこの辺で撮影しよう」と言われて、
汗だくの私はそのまま男優に挿入された。仕事のスイッチは入っているのに、なんとなく時間がいつもよりゆっくりに感じた。いつの間にか上がっていた息も普通のペースに戻った。男優に突かれながら半分くらい意識的に声を上げていた。通りがかる人はいなかった。蝉の声がうるさい。後背位になると土の臭い、草の臭いが強い。ハイカットの登山靴のせいで足首の自由がきかない。花火みたいな、でも全部白い花がすぐ目の前で揺れていた。揺れているのは自分だけど。花の匂いが嗅ぎたくて、息が自然荒くなる。それに応じて男優の動きが激しくなり、目の前で白い花火が大きく揺れた。熊よけの鈴がうるさい。瞬きもせずに花を見る私の顔をアップに撮ろうと動いたカメラマンが花を踏んでしまったので思わずワッと声が出て、その拍子に男優が射精した。
ガウンを着て仰向けに寝ると青空が遠い。さっきまで見ていた花がそこに咲いていた。目が痛くなるくらい瞬きせずにそれを見ていると、「山ガールの受難 愛欲の三点確保 濡れたゴアテックス……」今回の作品タイトル案を呟く監督の声が聞こえた。一瞬そちらに顔を向け、また空に向き直ると花はもう見えなくなっていた。
○月×日
今日は撮影で山に来たよー! 全身モンベルばっちこーい!
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スタッフさんにもらったインスタントラーメンおいしー!
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9月発売予定です! 監督さん! 売れたら焼肉おごってね! よろしく〜笑
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