第163期 #10

想像と記憶

ある土曜日帰宅途中の新宿駅ホーム 白線より下がっお待ちください
アナウンスとおりにする人々のずっと先の中からサラリーマン風の中年男性がふらふらっと歩く出る
入ってきた山手線外回りはまだかなりのスピード その電車にむかって歩く 電車にぶつかった瞬間ワーっと くるくるくるくる バレエのようにくるくるとホームと電車の間に片足が入った状態でくるくる バキバキ骨が折れる音 徐々に電車は止まった その男の身体は人形のように電車とホームの隙間に入り込んだまま壊れてしまった
白昼のあっという間の自殺劇 男性は無謀にも電車に飛び込んで生涯を終えた その電車に乗って高田馬場回り西武新宿線で上井草駅に出る予定だったが もうなかなか動かない山手線外回り 向かいホームの総武線に乗って西荻窪からバスで帰る事にした



Copyright © 2016 増田あきの / 編集: 短編