第162期 #8

私はお嫁さんになりたかった

私は小説家になりたかった

私は頭がよくなりたかった

私は優しい人になりたかった


私は、私は。

どれにもなれていない気がする
それは、私の人生と胸を張って言えるのだろうか
教えてください、私はどうすればいいのですか、どうしたら自分らしくある事ができるというのですか。どうしたら夢が叶えれるのですか。この現状から、どうか助けてください

目の前の、自分にすがりつく少女が泣きわめく

自分の口から出た言葉は、自分でも驚くほど冷たい色をしていた

「誰にも助けることなんて出来ないって、あなたはわかっているじゃあないの」

少女は恨みがましく私をねめつける

「あなたがどうにかするしか、ないんだよ」

少女はただ私に視線を送り続ける
恨みがましく、自分を睨み続ける

「自分にすがって何が悪いの」

「自問自答に意味はないんだよ」



Copyright © 2016 高田千里 / 編集: 短編