第162期 #11

銀座・仁坐・陽座

今回はお年を召した紳士と淑女のお話をしましょう。紳士は夜な夜な飲食店の入る様々なビルを賃貸ししているビルのオーナーであります。ご自身の名前の頭文字を付けたり、花の名前、イニシャル、屋号などに何号ビルとしている建物が多くございます。大家さんと店子の関係は毎年契約を交わす関係から、数十年同じ場所でクラブや飲食店を経営されている方々が様々で、家賃を年間契約し、造作をある程度の年月が経過すると、改装などを行いますが、その業者の選択、店内の調度品のレンタル料などとすべて大家に収入が上がる仕組みを作っているオーナーが多いようです。クラブ経営者には女性をホステスとして働かしている以上、痴情のもつれから色恋、男女関係から女同士の問題が相絡まって警察沙汰になるケースも、軽犯罪で警官が駆けつけて消沈する場合もあれば、傷害事件などに発展するkともちらほら、そこで管轄は築地警察署の刑事さん登場で、銀座のデカが大家さんの事務所に来訪され、事情を聴く。そこで全く下々の世界からかけ離れた、夢と幻想の世界が広がるオーナーの事務所で、垣間見る別世界で、あこがれる気持ちが先に立ち、数回訪問するうちに、立派な刑事さんたちが、オーナーに、ボデイガードとして雇ってもらえないかと陳情を受けるようです。そんな場合、定年まで勤め上げてからでも遅くないと、よく考えてからにしなさいと諭して、帰らせるとのこと。何とも公務員さんはお気楽な様子で誰のために命を懸けて働くのか疑問であります。
華やかな場所には様々な人種が集まりますが、近寄ってくる人々をどううまく使うかが、銀座の様々な職業に関係して、ビジネスチャンスが増えるのではないかと考えます。もう一人の淑女はお店のオーナーであります。こちらは若く銀座の娘になって、チイママを任され、大ママから譲りうけるまで十数年、気に入られるまで、尽くして尽くして尽くし抜く、そのころには大ママから引き継ぐべく、資産も人脈、客筋も十分整っての継承となる。これから命、体力の続くまで4−50年店のオーナーとして続けている淑女は7−80歳を迎え、それに続く、淑女たちに店が、継承されるのである。
50数年続いた店が昨年閉店し、こじんまりとしたバーのオーナーとして、今までの店の娘たちやアフターを一緒するお客の閉店時間以降の朝までの憩いの場所として、ひっそりとオープンしている淑女の世界が広がっているのです。



Copyright © 2016 Gene Yosh (吉田 仁) / 編集: 短編