第160期 #5

ヒーロー

僕はヒーローだ!
弱い人がいたら、放っておくことが出来ない。
彼はいつも誰かにいじめられている、だから、僕はいつも彼を助けるんだ。

また、彼がいじめられている。一方的に暴力を振るわれている、助けないと行けない。
『おい、君。彼に暴力を振るのはやめたまえ!』
『なんだ、お前は。お前には関係がないだろ。それに彼が…』
『口答えをするな!』

僕は彼を守るためいじめっ子を懲らしめた。それに懲りたのか、さっさと逃げてしまった。
『君、大丈夫かい?』
『ありがとう、助かったよ』

別の日には、また、彼が別のいじめっ子からおもちゃを取られそうになっていた。
僕は彼を守るためいじめっ子を懲らしめた。

また、別の日には、彼が複数の人たちからランドセルを持たされ、荷物待ちをさせられていた。
僕は相手が何人でも臆することはない。ヒーローだから!

何度も何度も、来る日も来る日も僕は彼を守り続けた。

彼の感謝の言葉が聞きたくて。
『ありがとう、君は僕のヒーローだ。』

彼は僕のヒーローだ!
僕が誰かに暴力を振るわれたり、不当な扱いを受けたときには助けてくれるヒーローだ!

そう、僕が先に殴りかかったとしても、おもちゃを奪ったとしても、
嫌なやつを懲らしめてくれるのを分かっていて、自分から荷物待ちをしたとしても。

そんな、僕の真意を知った時、彼はどう思うのだろう…



Copyright © 2016 吉井秀 / 編集: 短編