第160期 #2

真実とは

真実とは嘘や偽りが無いこと。
真実とは周りの人間によって作られたもの。

それが、わたし達だ。

「ねえ、あの子」「ああ、そう言えば」「最低ね」「気持ち悪い」「近寄らないほうが」「やだやだ」

わたしは何もしていなかった。
悪いのはあの子だった。
それでも悪いのはわたしなのだと周りは言った。

「貴方がやったのね?」

先生は言った。
否定を認めない、その言葉。
面倒くささと、怒りをまぜこぜにした瞳。

「そうですね。ええ、そうらしいですね。」

後ろで小さくえ、と声が漏れたのをわたしは知っている。
くすくすと笑っていたあの子が混乱しているのも知っている。

「わたしが、やったのですよ。」

くすり、嘲るように小さく笑う。どうして認めたのか、なんて分かりきったことなんだろう。

「周り」が「わたし」を「悪」としたならば。
「わたし」が「あの子」を「悪」だと言えど。

「周り」が、大勢の意見の方が勝利する。
分かりきってる。知っている。知りたくもなかった。

それでも私は理解してしまった。
それは私が弱者であるがゆえ。

「わたしがわるいんですよ。」

だからあの子達は正しいのですよ。
綺麗事なんてうんざりなんです。

「あ、あなた…!」

先生は怒りに震えた声を私に向けた。
ああ、恐いですね。

わたしが悪い。

「(それは変わりようのない真実。)」

なんて理不尽な、無情な世界なんだろうね。


(数日後、あの子達は「悪者」になった。)
(人に濡れ衣を着せた、最低な人達だと皆は言う。)
(それが、真実。)
(真実とは、周りの人間によって作られたもの。)



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