第160期 #13

俺たちがスーパーファミコンだ

 私は男だった。
 幼馴染は女だった。彼女は美人でホステスが仕事だった。
 私の男友達で、予備校で知り合った彼は見てくれが悪かった。
 美醜の差でもって私は二人を引きあわせるのをためらっていた。
 私たち三人はもう三〇歳を過ぎていた。
 スーパーファミコンを彼女の家で遊ぶ機会があって、その時に私たち三人は仲良くなった。彼女がスーパーファミコンでスーパーボンバーマンを遊びたいと言って、彼しか本体を持っていなかったから、彼女の家に私が彼を連れて行った。
 (第一部 完)

「俺がスーパーファミコンだ」
 そう言っていた彼は交通事故で死んだ。一目で彼女を好きになってしまった彼は、彼女の家にスーパーファミコンを置きっぱなしにして、彼女のことを好きになりすぎてそのコントローラーの中にわざわざねじを開けて自分の陰毛を入れた。それをそのままで彼は死んで、わざわざその混入の事実を私は彼女に打ちあけることもせず、また彼が死んだことも言わずにいた。
 彼女にいらぬ気苦労(特に女性というのは人の死に敏感((特に哀しくなくても哀しんだ振りをせねば冷淡な人間だと思われる(((これは私の邪推や偏見かもしれないが)))のをさけるため))だと思う)をさせたくなかったから。
 (第二部 完)

 彼の死後、彼女が私に質問してきたことがある。
「あなた子供は?」
「いない」
「結婚は?」
「考えたことがない」
 彼女には金持ちの老人の愛人がいた。彼女が言うには老人は一級市民で私や死んだ彼(彼女は依然として彼の死は知らないままだったが)は二級市民なのだそうだ。一級市民はきちんとバッハやモーツァルトを愛して、二級市民は安い国産音楽に耽溺するのだそうだ。
 でも一級にも二級にも同じ国土に沈む美しい夕やけが見られるのだから、級の違いは卑賤の違いではない(と、老人からそう言うべきだと教わったと彼女から聞かされた)。
 そして彼女はその老人から近頃求婚された。
 そして彼女は本当はスーパーファミコンではなくイカがインク(ink)をシンク(sink)しながら撃ちまくるスプラトゥーンという任天堂のウィーユー新ゲームが本当はしたかったのだと私に教えた。
 それはすまなかったと私は彼女に詫びた。
 そんなことないよ嬉しかったと彼女は言う。
 私は彼女が嘘を言っているのだということだけは明確に分かった(私は彼女には彼の死を一生言うまい)(老人にも、彼の死は伝わるまい)。



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