第16期 #7
「警部お待ちしておりました。」
トレンティーノは部下の敬礼を目礼で返し、夜もヒッパレの復活を祈った。トレンティーノはちょっとセンチになり、ウンチが黄門様を激しくノックしたが、助さん、格さんの活躍により、今日も平和が保たれた。
トレンティーノはいつも通り襟を立てたトレンチコートをはおっていたが、休日出勤のため中はブリーフ一丁であった。
時折刻む16ビートのチラリズムは生理的不愉快であったが、白雪のようなブリーフは初日を伺わせ部下は安心した。トレンティーノはブリーフを七日間連続装着する四次元ブリーラーであった。七日目のブリーフは見るものの視覚や嗅覚を強烈に刺激をし、心を折った。
「ホシの名前は太田雄二、20歳。Y大の二年生です。」
トレンティーノは顎の髭をゆっくりと擦り、視線を太田に向けた。今にも飛び降りようとする興奮した太田の姿は、ホモ科狩猟民族のトレンティーノの大好物であり、純白ブリーフに軽い染みが滲みはじめた。
「太田はかなりの借金があるみたいで、暴力団とのつなが・・。」
「ドントタッチミー」
NOVA帰りのトレンティーノ叫びは綺麗な金髪であった。発音があまりにも素晴らしいため、トレンティーノのウルトラソウルは伝わり、部下は口を閉じた。
トレンティーノはゆっくりと頷くとトレンチコートを脱ぎ部下に手渡した。野次馬と警官でごったがえしている現場に、トレンティーノが進む度にモーゼの奇跡の如く道が出来た。
騒ぎに気づいた太田は近づくトレンティーノに叫んだ。
「それ以上近づくな。飛び降りるぞ。」
太田はポケットに隠し持っていた拳銃を取り出し、トレンティーノに向けてかまえた。
「来るな!撃つぞ!」
「撃ちなさい。私はもう発射しました。」
太田は叫びながら銃を撃ったが、素人の銃弾はトレンティーノには当たらなかった。
トレンティーノはその隙に一気に太田との間合いを詰め抱きしめた。勝負はついた。
トレンティーノの抱擁は、聖母マリアにに抱かれた様に、癒され、救われるのである。
太田は涙し、手から銃が落ちた。トレンティーノは太田を見つめた。
「あなたを逮捕します。」
トレンティーノは手錠の代わりに激しいベーゼをした。ねっとりと絡みつく濃厚なトレンティーノの舌は人に触覚があることを憎ませた。太田の心が折れ、ひざも折れた。太田の体はセピア色した地上に落ちていった。トレンティーノは消えていく太田に向かって本日二発目を発射した。