第159期 #2

危険な薬

 博士の外出中、唯一の助手であるその男は、何をするでもなく、研究室で朝からずっと留守番をしていた。
 しかし男は、あまりにも退屈になって、博士の発明品を眺めたり少しいじったりして暇をつぶし始めた。彼は好奇心に任せてその暇つぶしに没頭した。助手とはいっても、普段は掃除などの雑用ばかりで、博士の発明にはほとんど携わっていないのだった。

「これは一体何の薬だろうか」
 男はそう言って、机の上に置いてある、薬のたくさん入ったビンを持ち上げた。そしてそのすぐ横に、博士が書いたのであろう走り書きのメモを見つけた。そのメモにはこう書かれていた。

【記憶を消す薬。飲むだけで嫌なことを忘れられる薬として実用化予定。現段階では、1錠飲むと、直前の約3分間の記憶が消える。だたしまだ不完全な試作品。1日に5,6錠飲むだけで体に害が及び、場合によっては、死に至る恐れもあり危険】

 それを読んだ男は、ビンから薬を1錠取り出して、
「なんだかおもしろそうだな。一粒くらいなら飲んでも大丈夫だろう。これも助手の特権というものだなあ。はははは」
と嬉しそうに呟いて、飲み込んだ……。






「あれ? 俺はなにを……。そうだ。博士の発明品を拝見してたんだったな……ん?」
 男は机の上に置かれた薬の入ったビンを見つけた。
「これは一体何の薬だろうか」


 そして男は、そばにあったメモ書きを読み、一粒くらいなら、と嬉しそうに呟きながら薬を1錠取り出して、それを飲み込んだ……。



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