第158期 #8
水嶋桃奈の人生は輝いている。
多くの人間が生きていく過程で諦めてしまう夢を彼女は現実にした。
アイドル。それは自分の元気を他者に分け与える活力みなぎる慈善事業だ。
彼女は誇りを持っている。何千何万もの鉛玉のような目をした男たちの前に立つということに。
彼女は誇りを持っている。笑顔を振りまくだけで財を生み出す自分の価値に。
彼女は誇りを持っている。明日もアイドルでいるために毎夜変わる男たちに貪られる自分の身体に。
駅から離れた安アパートに帰った彼女はいつ買ったかも忘れてしまったカップ麺を啜り、申し訳程度に作られたベランダでタバコを燻らす。満天の星空に溶けていく毒煙はどこかで見たような鉛玉になった彼女の目に美しく映った。
水島桃奈の人生は輝いている。今日も鈍く鈍く。