第158期 #7

おとうと

ある朝弟はパパに尋ねた。
パパの足はどうして臭いの?
仕事で疲れて眠くて仕方ないパパはこう答えた。
お前達の為に一生懸命働いてお金を稼いでいるからだよ。

なるほどぉ。
だからパパの足は臭いのかぁ。
弟はそれで納得した。

ある朝弟はママに尋ねた。

どーしてママはいつも元気いっぱいなのー?
それはね、ママはお洗濯をしたりごはんを作ったり
あなた達と一緒に遊んだり沢山したいことがあるからよ。

なるほどぉ。
だから、ママはいつも元気いっぱいなんだねぇ。

弟はそれで納得した。

ある朝
弟はおばあちゃんに尋ねた。
どーして、おばあちゃんの手はそんなにしわしわなのー?

するとおばあちゃんは答えた。
これはねぇ、おばあちゃんは生きてきて沢山幸せになったしょうこなんだよう。
しわしわな分だけおばあちゃんは幸せなんだよう。

なるほどぉ。
だからおばあちゃんはいつもニコニコしてるのかぁ。

弟は納得した。


ある晩の日
弟は俺に尋ねた。

どーしてお兄ちゃんは
生きていて何も生産性がないくせに毎日毎日起きてネトゲしてアニメ見てニコニコしながら2ちゃんスレ開いてるの?働けよゴミ屑。今年30過ぎるだろ?賢者か、賢者を目指してるのか、このマダオ。いい加減社会の荒波に揉まれてこいよ。お前の才能はいつ開花するんだよ。

俺は泣いた。



Copyright © 2015 斎藤詩音 / 編集: 短編