第158期 #6

きみがそばにいてくれるなら

それはみんなとは違う容姿でした。
それはみんなに笑われて、除け者にされ、いつも1人ぼっちでした。
それはとても悲しかったですが、とくに怒ることもなく静かに、静かに去って行きました。
それはいつも決まった場所に向かいました。
そこは、とても安心で、安らげる場所だったからです。
『またここに来たのかい?』
『うん。』
『あなたも飽きないなぁ、一緒に居たってつまらないだろう?何せ、動けないからね。』
『それでも、きみは普通に接してくれるだろう?それだけで、とても特別な事だと感じるんだ。』
それはこうして、なんてことは無い普通の会話を
幸せだと感じていた。

『ベッドタウン○月○日新規オープン!』

動けないきみが居た場所は
無機質な素材で出来たモノに変わっていた。

きみが確かに存在していたであろう、切り株だけはそのままになっていた。
ぼくはそこにしがみつき、2度と離れることは無かった。

そして、それはみんなから嫌われていたが
みんなが見上げるような綺麗な桜になりました。



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