第158期 #2

浄化

 いつもは無理だけど、もしこのマシン(機体)の後部座席に君をのせて飛び立てたのならふたりでこの空を駆け抜けてみたい。
 
 機体の性能は脆弱だけど君を守るための装備は整備済み。

 もしかしたらふいの追尾ミサイルを振り切れるかもしれない。君とならあの難攻不落の要塞を突破できる可能性もある。

 そうしたら、ふたりで雲の上を人知れず飛んでみたい。

 機体の強度は自然と増して搭載されたOSは自動アップデート、平衡翼は正常、エンジンの温度も調度良い、コクピットの中はなにか良い匂いがする。

 何よりいつも気分が落ち着いている自分を展望できる。


 イジェクションポッドを使う日まで飛ぼう。

 まだ見ぬ空をも越えて行けるなら...。


 そしてなかなか取れない胸にあるしこりをいつか浄化できることを願って。



Copyright © 2015 瀬沼大 / 編集: 短編