第158期 #13
捜し物をしているのだと言った。きみを開かせてくれないかと。それでわたしはうなずいた。たぶん同じものをわたしも探している。
かれは丁寧にわたしの身体に刃を滑らせた。肌が開いて紅い血が滲み出す。わたしはそれを何の感慨も覚えず見つめていた。かれも特に表情を変えることはなく、何も口にしなかった。
かれは丁寧にわたしの身体を切り開いていった。開いた口を水で洗い、溢れ出る血液を吸水器で吸い取る。繊維が絡みつくようにして、わたしの体内は形をなしていた。かれが刃を動かすたびに、その複雑に絡み合った繊維が一本の糸に分かれていく。
わたしは、と、わたしは言った。何でできてるの。
ぼくの捜し物、と、かれは言った。
首から一条の糸だけを残し、わたしの身体はわたしから離れた。かれはわたしの頭を丁寧に横向きにして自分のほうを向かせ、すべての作業をわたしに見せくれた。
ほどかれていくわたしの身体。床に落ちていくわたしの糸。
何を捜しているの、とわたしは言った。
きみと同じものかな、とかれは言った。
わたしの瞳に映っているのは、分解されていくわたしの身体。もうわたしの意図では動かないわたしの糸。屑として処理されていくわたしだったモノ。
捜し物は見つかった? とわたしは尋ねた。
かれは答えずに、わたしに軽い口づけをした。
わたしはかれの口内を吸い、見つけ出したかれの小さな糸を、その舌に絡めた。