第158期 #11

銀座、仁坐、妖坐

ハロウィーンが日本に定着して15年ほどたっていますか。子供がお化けの格好をして、お菓子欲しさに各お家を回り、「いたずらしちゃうぞ」と近所を練り歩く。アメリカでは小学校高学年まで、テイーンエイジャーは卒業だったのが、日本ではおじん、おばんまでデーモン閣下になってしまう季節。家々の大人は子供に与えるお菓子を用意しておけばよかったのに、いまの仮装大会の大騒ぎは迷惑ですね。銀座の娘たちはあこがれのコスプレに身を包み接客をしますが、今の若者は幼稚園でハロウィーンを経験しているため、派手な格好を経験済みでそのまま子供に戻っているのかなあ。
この時期年末に向け日本に一時帰国する海外駐在員もクリスマスシーズンは動けないため、商用で帰国、来年の展開などを本社と協議するなどの重要な時期でもある。そのため、幹部社員が帰国する、顧客訪問を兼ねて、経済動静も確認する時期となる。しかし今年は景気回復の見通し悪く、政府の不透明なゴリ押し政策で、景気対策は置いてけ堀、さらに大手企業の粉飾決算や、偽装工作で、内外も大企業の社会的信頼度がかけている、景気が悪いため、銀座の顧客も相変わらずのITバブル化系企業が多く、少々品の落ちた紳士があふれている。さらに年配の社員が若者を教育する機会が少ないため、酒の飲めない若者は身銭を切って、顧客接待の経験を積むことなど皆無である。時折ひどい接待現場に遭遇する。接待受ける客が舞い上がり、娘たちへ悪行をし尽す者、接待する側が泥酔し、場を壊す。長い固定客にはならないであろう一見客が横行する。常連客が、気の合った客だけを誘い来店する為、新しいメンバーが増えない、従ってお店の成績も上がらない。大変手痛い時期である。
東京オリンピック関連受注に盛り上がった建築業界も見直しが続き、きついお仕置きが待っている。おもてなしの精神で来訪者の増加が堅調で予想外の利益をもたらしている観光業界も急に日本のイメージが上がり、観光客の宿泊施設が追い付かない。様々な目論見が試行錯誤するこの頃。季節は一気に冬に向かっていくのである。
半世紀この業界に君臨した銀座の母は言う。店が顧客を見抜く、顧客は信頼できる店を見抜く。利用する側は、接待先の昼間の取引の見返りを待つ。そしてお礼に今晩如何?と。この連携が日本経済を支えてきた。昭和のサラリーマン、平成のスーパー経営者、次の時代は誰が作る?と。



Copyright © 2015 Gene Yosh (吉田 仁) / 編集: 短編